3月10日 保険料急上昇の予測
Source :Premiums for ACA health insurance plans could jump 90 percent in three years (Washington Post)
3月8日、Covered CAが個人保険プランの保険料上昇率予測を公表した(Individual Markets Nationally Face High Premium Increases in Coming Years Absent Federal or State Action, With Wide Variation Among States)。

そこでは、連邦政府・州政府とも何もアクションを採らなければ、という仮定での予測ではあるが、衝撃的な上昇率が見込まれている。

次の表がそのエッセンスである。
全米で見ると、2019年に12〜32%、2021年までの3年間で36〜94%の上昇率となっている。保険料上昇の要因は、影響の大きい順に、
  1. 保険未加入ペナルティの撤廃(2019年〜)
  2. 医療コストの上昇
  3. 保険加入申し込み期間の短縮
  4. AHP、短期間保険の導入
となっている。やはり、個人保険義務の実質的撤廃の影響は大きい。

さらに、これを州別に分析したものを見ると、3年間で90%以上上昇する(Catastrophic)と見込まれている州は17もある。
一見すると、南部、西部で共和党が強い地域での上昇率が高い。個人保険加入義務に対する反発が強いところで、より影響が大きく出るということなのだろう。



※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/連邦レベル」、「医療保険プラン

3月9日 人事評価提供の責任
Source :Can Employers Give a Bad Reference for a Former Employee? (SHRM)
ジョブホッピングが当たり前のアメリカ労働市場では、採用を検討する際、前職での人事評価を照会することが当たり前のようになっているそうだ。『そうだ』と書かざるを得ないのは、本当にそうした場面があるのか、実際には見たことがないからだ。映画などでも面接の場面はよく出てくるが、前職での人事評価が理由で採用がだめになるようなシーンは知らないからだ。

上記sourceでは、原則として前職の人事担当者は照会に対して真実を述べればよいのだが、各州法にその権利と責任が記されていることをよく理解しておくべきだ、としている。ポイントは次の通り。
  1. 連邦法では、人事評価に関する照会について規定するものはない。

  2. 多くの州で、人事評価に関する情報を提供する場合の人事担当者への免責について法定化している。

  3. 多くの場合、誠実に対応しさえすれば免責が認められるが、知りながら間違った情報を提供したり、悪意をもって誤解を招くような情報を提供したりすれば、免責は認められない。

  4. 退職の理由が、マイノリティや障がい者にに対する危害の恐れであるような場合には、人事担当者は協力的に対応する必要があろう。

  5. 個別州の事例

    • ハワイ州:基本的に人事担当者が誠実に対応することが前提となっており、その悪意が証明されない限り、免責が認められる。

    • アーカンソー州:人事担当者は、予め退職者から照会対応を認めるとの合意を文書で求めておく必要がある。また、免責が認められる情報は、雇用期間、賃金、職責、最後の人事評価の詳細、職場における暴力の可能性、退職理由のみである。

    • ミズーリ州:文書による照会に対して文書で対応することが求められる。さらに、人事担当者はその照会対応文書のコピーを退職者に渡さなければならない。
人事評価を文書でやり取りするというのは、人事部にとっては法律上の安全策なのだろうが、何だか表面的なものしか出てこないような気がする。本当に採用選考に影響があるのかどうか、疑わしくなってくる。こういうのは、本当にアメリカで生活してみないとわからないのだろうな。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

3月5日 AHPは中小企業に福音
Source :Prepare Now for Association Health Plan (AHP) Rule Changes (HR Daily Advisor)
1月、労働省はAHP制度設計案を公表した。この制度案の中で、労働省は、ERISAに定める「利益が共通する複数の企業」の定義を変更し、幅広い中小企業がAHPを組成できるようにしている(「Topics2018年1月10日AHP制度設計案」参照)。上記sourceは、この定義変更は、中小企業にとって福音である、と称賛している。 パブリックコメントの募集は、3月6日に終了する。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

3月2日 有給病気休暇:制度設計が進まない
Source :Lawmakers Agree On Paid Family Leave, But Not The Details (NPR)
今年の一般教書演説で、トランプ大統領は有給休暇制度の普及を訴えた(「Topics2018年1月31日(1) トランプ初の一般教書演説」参照)。現状、有給休暇制度を利用できる被用者は14%に過ぎない。連邦法では病気休暇制度はあるものの、有給とはなっていない。有給病気休暇は、企業が独自に制度を導入しているか、州法の規定によるものである。

州法により有給病気休暇が導入されているのは、5州+D.C.(うち、WA州の施行は2019年1月)だけだ(State Paid Family Leave Laws)。ちなみに、連邦FMLAよりも寛容な州法を導入しているのは8州ある(State Family Leave Laws)。
それぞれの比較表を見ればわかる通り、州法レベルでの制度内容はばらばらだ。競い合うということで良いという意見もあるようだが、企業にとってはたまらない。できれば連邦政府レベルで制度を導入してもらった方がありがたい。

有給病気休暇制度の普及については、民主党のみならず共和党の中でも賛同者は多い。しかし、制度設計の具体化となるとなかなか進んでいないのが現状だ。上記sourceで紹介されている法案の骨子は次の通り。 いずれの法案もそうだし、実際に導入されている州法も、"No work, No pay"の原則に立った制度となっている。だから新たな財源が必要ということになるのだろう。

※ 参考テーマ「労働法制/人事政策

3月1日 雇用者定義再変更は無効
Source :NLRB Vacates Joint-Employer Decision (SHRM)
昨年12月にNLRBは雇用者定義の再変更を決定したが、2月26日、その決定が無効となった(「Topics2017年12月19日 雇用者の定義を再変更」参照)。

NLRB委員であるWilliam J. Emanuel氏は、以前、弁護士事務所に所属していたが、その弁護士事務所が、雇用者定義を変更した2015年9月の事案の企業代表を勤めていた。本来であれば、Emanuel氏は投票を行なってはいけなかったのだが、実際には投票していた。これが規定違反に問われ、投票結果が無効となったのだ。

ちなみに、昨年12月の投票時、Emanuel氏は定義再変更の賛成票を投じた。同氏が投票に参加しなければ、2vs2の同数となり、決定はできなかったことになる。

この状況は、現在でも変わらない。従って、NLRBの投票によって雇用者定義の再変更を進めることは難しくなった。

一方で、連邦議会共和党は、雇用者定義の再変更を立法により進めようとしている。"Save Local Business Act"(H.R.3441)は、昨年11月に下院で可決され、現在は上院に送られている。ただし、審議日程は未定のままになっている。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「労働組合