9月10日 民主党の選挙戦略 
Source :Democrats Aren't Running From Health Care. But What Are They Running On? (New York Times)
New York Times紙は、接戦が予想されている下院選挙区33の民主・共和両党の候補者のキャンペーン・サイトを分析した。政策課題毎にその傾向を分析しているが、まずは、どのような政策課題を取り上げているのか、という全体図の集約である。
これをみると、当websiteの関心事項として扱っている、"Health Care", "Jobs", "Social Security", "Immigration", "", "Gay Rights", "Organaized Labor"などが並んでいる。

では、これらの政策課題について、どのようなスタンスを表明しているのだろうか。上記sourceをまとめてみると、次のようになる。
Issues民主党共和党
Health Care・明確な賛成から批判まで様々なスタンス。
・医療保険改革は始まったばかりであり、更なる修正が必要。
・民主党が導入した医療保険改革法は廃止すべき
Social Security
Medicare
・共和党よりは積極的に触れている。
Gay Rights・積極的な意思表明をしない。・積極的な意思表明をしない。
Organaized Labor・懸案中のEFCAがあるのに、何も触れていない。
全体を通じて、『共和党候補者達の方が、クリアで一貫したキャンペーンを張っている』という総括のようである。確かに、最大の功績であるはずの医療保険改革を、改善の余地があると評価せざるを得ないところに、民主党候補者達の苦しさが窺われる。

※ 参考テーマ「中間選挙(2010年)

9月9日 次は州職員年金の救済か? 
Source :Businesses and unions planning to meet on possible $3 trillion pension disaster (The Hill)
州政府の退職後給付債務の積立不足は3兆ドル、というのが定説になりつつあるようだ。NCPAの推計は、既に当websiteで紹介している(「Topics2010年8月3日(2) 自治体の退職給付債務の実態」参照)。また、6月に州政府年金の基金が順次枯渇していく、との論文(「Topics2010年6月14日 地方政府年金の基金枯渇」参照)を発表したノースウェスタン大学のJoshua D. Rauh准教授も、8月に「給付債務の積立不足は3兆ドル以上」との論文を発表した。

で、上記sourceの報道だが、全米商工会議所(USCC)が各地の労組を招いてディスカッションをする予定だ、というのである。

背景はこういうことらしい。 次なる年金プラン救済が静かに動き出している。

※ 参考テーマ「地方政府年金

9月5日 従業員負担増の方向 
Source :Employer Health Benefits 2010 Annual Survey (Kaiser Family Foundation)
企業が提供する医療保険プランに関する実態調査が公表された。当websiteの観点から、特徴的なポイントは次の通り。
  1. 保険料はこの10年間で倍以上。そのうち、従業員の保険料負担は1.5倍となっている。
  2. 保険料のうち、従業員の負担割合はじわじわと上昇している。
  3. 従業員負担額の上昇は著しい。
  4. 免責額を$1,000以上に定めている企業の割合が急増している。
  5. 特に、大企業での採用増が顕著である。
  6. 退職者医療プランの長期減少傾向は続いている。
企業が従業員の負担増を求める背景には、次のような要素があるといわれている(New York Times)。
  1. 景気後退の影響が深刻で、今後の経済見通しも不透明。
  2. 医療保険改革法の施行により、医療保険のコストは高まると見ている(予防ケアの義務化など)。
  3. "Exchange"の創設を見越して、従業員一人当たりの負担を定額に移行させる。
最近、何度も書いているが、これでは一般国民、従業員は、医療保険改革法の恩恵を実感できまい。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル

9月4日 HIPAAプラン保険料の急騰 
Source :California's safety-net health insurance premiums rise (Los Angeles Times)
CA州の医療保険プランの保険料引き上げが認められたことはすでに紹介した(「Topics2010年8月26日(1) 保険料引上げ幅決定:CA州」参照)。しかし、その結果、失職した人達が頼みの綱としている"HIPAAプラン"の保険料が大幅に引き上げられそうだというのである。

失業すると、まずはCOBRAを利用して元の職場の医療保険プランの加入継続を図る。通常、加入継続期間は18ヵ月である。その間に次の職場が見つかり、そこで医療保険が提供されていればそれでよし。就職先が見つからず失業状態が続いていたり、見つかっても医療保険プランの提供がなければ、次の手段として"HIPAAプラン"を利用することがある。

CMSの資料によれば、失業により医療保険プランを失った人には、病歴等に拘わらず医療保険への加入を認めなければならないことが、保険会社に義務付けられている。上記sourceによれば、CA州内でこのプランに加入している人が2万人いる。この人達の中には、今回の保険料引き上げで、$7,500の追加負担をしなければならなくなり、総額$25,000の保険料を払うことになるケースもあるという。単純に引き上げ率を計算すると、40%程度にもなる。これでは、本当に失業中であれば、現実的に保険加入は不可能となろう。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策

9月3日 再就職≒賃金低下 
Source :For Many, a New Job Means Lower Wages, Studies Find (New York Times)
失業率が高止まり、再就職戦線が厳しい中、再就職できたとしても決してハッピーではない。賃金が下がっている場合が多いからだ。
この図をみると、景気後退が始まってから雇用が増えているのは、技能が低くても済むような職種が多く、中程度の技能を持ったミドルクラスの生活をしていた職種が大幅に減少している。
また、この図を見ると、かつて高級取りで花形産業であった情報産業、金融・保険などの雇用が減少している。さらに、以前にも紹介した通り、不動産、建設業の雇用減少幅は際立っている(「Topics2010年8月31日 住宅関連の雇用が不振」参照)。

こうした傾向が続けば、仮に失業率が同水準で推移したとしても、全体の雇用所得は低下するため、消費や物価にも悪影響が及ぶ。

※ 参考テーマ「労働市場

9月2日 共和党を選好? 
Source :Americans Give GOP Edge on Most Election Issues (USA Today/Gallup)
Gallup社の世論調査で、主たる政策課題について、共和党の方がうまく対処できると考えている割合が大きいことが判明した。

次の表は、共和党に軍配を上げる割合が高い方から並べた調査結果である。
当websiteの関心事項である、移民問題、連邦政府財政支出、経済、雇用といったところは、共和党に軍配が上がっている。一方、医療はわずかに民主党が上回っている。

また、連邦議会の中間選挙で重要と思われる政策課題は、経済、雇用、財政支出ときて、その次にようやく医療が来る、という順番である。
つまり、選挙民が重要と考える政策課題で、共和党の方が好ましい、という結果が出ているのである。もちろん、上記sourceでも断っているように、『積極的に共和党を支持しているのか、現民主党政権に対する不満の表れなのか』は定かではない。

それにしても、あれだけ労力をかけた医療保険改革法が国民の間であまり評価されていないということは、民主党にとっては当てが外れたとしか云い様がないだろう。また、「2014年になれば改革の実績が表面化するのであり、それが理解されれば評価は高まる」(「Topics2010年8月27日 広告 vs 教育」参照)と自負してはみても、足許の医療保険料は大幅アップ、失業に伴う無保険者は増加など、国民にとって良くなったという実感は全くと言ってもいいほどないだろう。

※ 参考テーマ「中間選挙(2010年)」、「無保険者対策/連邦レベル」、「労働市場

9月1日 救貧プログラムの発動 
Source :Record number in government anti-poverty programs (USA TODAY)
アメリカの救貧プログラムがフル稼働状態となっている。上記sourceでは、アメリカ人の6人に一人がプログラムの給付対象となっており、その規模はまだ拡大し続けているという。

ここで挙げられているプログラムは次の4つ。
  1. Medicaid
    加入者は5,000万人超。景気後退が始まってから(2007年12月)の増加率は17%以上。
    医療保険改革法ではさらに1,600万人の加入者増が見込まれており、民間の医師は、「もう限界に来ている」と考えている。
    連邦政府の支出は、2年間で36%増加し、$273Bに達した。

  2. 失業保険
    受給者は1,000万人に近づきつつある。これは2007年に較べて4倍の水準となる。
    給付費は$43Bから$160Bに膨らんだ。

  3. Food Stamps
    受給者は4,000万人超。景気後退期からの増加率は50%。
    支給額は、80%増加して$70Bに達した。

  4. 生活保護
    対象者は440万人超。景気後退期からの増加率は18%。
    支給額は、24%増加して$22Bに達した。

これらのプログラム費用を合計すると、Medicareに要する費用を上回るという。アメリカ連邦政府、州政府ともに、これらの財政負担増に耐えながら健全化を進めなければならない。厳しい状況である。

一方、これらのプログラムの対象にはならない、つまりMedicaidの対象にはならない人達も、COBRA保険料補助の延長見通しが立たない中、医療費については大変厳しい状況に置かれてしまっている。The Foundation for Health Coverage Education (FHCE)という財団のサイトでは、そういう人達でも加入できる、低コストまたは費用負担のかからない様々なプログラムを探すことができるようになっている(Wall Street Journal)。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策