1月20日 奇策は回避の見通し 
Source :G.O.P. Victory Imperils Health Care Overhaul (New York Times)
MA州の特別上院選挙は、あっけなく共和党の勝利で終わった。開票当初から共和党候補者が大きくリードし、投票終了後、1時間15分後には結果が判明してしまった。

Results

Polls closed at 8:00 PM Eastern time. At 9:06 PM BNO News projected Brown as the winner of the race. At 9:15pm, the Boston Globe reported that Coakley had telephoned Brown and conceded the election.

2010 Massachusetts U.S. Senate special election
Party Candidate Votes %
Republican Scott Brown 1,168,107 51.9%
Democratic Martha Coakley 1,058,682 47.1%
Independent Joseph L. Kennedy 22,237 1.0%
Total votes 2,249,026 100%
Obama大統領及び連邦議会民主党幹部にとっては、大きな打撃である。

しかし、先週から今週にかけて議論されていた『上院法案を下院に丸呑みさせる』という奇策は実行されない見通しとなってきた。

下院民主党では、Chris Van Hollen下院議員が、「今回の選挙戦で医療保険改革は間違いなく争点の一つであった」と公言している。また、上院法案に不満を持つ民主党下院議員が多くいることから、Pelosi下院議長も、奇策に消極的になりつつあるそうだ。

一方、上院でも、James Webb上院議員が、「Brown氏(共和党候補者)が上院議員に正式に就任するまで、医療関連法案の投票は行うべきではない」と呼びかけている。

連邦議会では良識が働き始めたようである。もう一歩良識を働かせるとすれば、本来は『超党派での合意』を目指すべきなのであろう。そこまでの政治力がObama大統領に残されているのかがポイントとなる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

1月19日 "Plan B" 
Source :Democrats Seeking to Push Health Bill Through House (New York Times)
MA州の上院特別選挙の注目度がどんどん上昇している。当websiteで紹介した時点(「Topics2010年1月16日 上院特別選挙 in MA」参照)よりも、さらに共和党候補有利の世論調査結果が積み重なっている。これは、POLLSTER.COMでも同様の傾向が確認できる。

先に紹介した民主党の対応案(「Topics2010年1月16日 上院特別選挙 in MA」参照)のうち、上院案を下院に丸呑みさせることが真剣に検討されているようだ。Pelosi下院議長も、医療保険改革で何らかの実績を上げることの方に重点を置いている模様だ。

しかし、中間選挙年に入ってしまったことから、民主党下院議員達は、簡単に納得しないと思われる。火種はたくさんある(上下両院法案比較表)。 Obama大統領、連邦議会民主党幹部達は、MA州の上院特別選挙がまさかここまで苦戦するとは予想だにしなかったのであろうが、つくづく政治日程の大事さを思い知らされる。さて、ここには、どのような結果が書き込まれるのだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

1月16日 上院特別選挙 in MA 
Source :Narrow Senate Race Unnerves Democrats on Health Care (New York Times)
来週19日(火)、MA州で上院特別選挙が行われる。故Kennedy上院議員の空席を補うための補選である(「Topics2009年9月1日 MA州特別選挙の日程」参照)。当初、故Kennedy上院議員の後継を選出する選挙ということで、民主党候補者が圧倒的にリードしていたが、今年に入り、共和党候補が急速に支持を伸ばし、今日、この時点で、世論調査では逆転している。

こうした状況で、選挙結果は、二つの意味で、とても注目されている。
  1. 医療保険改革法案への影響

    上院で民主党が議席を失い、共和党議席が一つ増えることは、決定的な意味を持つ。民主党系が60票を確保できなくなるからである。通常、両院協議会で作成され直した法案は、上下両院で投票にかけられる。上院では60票の支持がなければ、可決されない。

    万が一、民主党が議席を失った場合(もしくは失いそうになった場合)、医療改革法案に関する投票について、民主党としては何らかの方策を講じなければならなくなる。

    1. 接戦になれば投票結果は2週間くらいしないと出てこない。その結果が判明する前に、連邦議会での投票を済ませてしまう。
    2. 上院案をそのままにして、下院を説得して、上院案を下院に可決させてしまう。
    3. 上院で60票が必要にならないような手続きを採ってしまう。

    などが選択肢となっているようだ。

    しかし、a.は、政権担当者としては余りにも姑息であり、b.は、既に"Cadillac Plans"課税で変更を約束してしまったために、現実的には不可能である(「Topics2010年1月15日 "Cadillac Plans"課税で合意」参照)。最後の案も、その後の制約が大きくなることが考えられるため、大変厳しい。

  2. 2010年中間選挙への影響

    今年に入って初めての国政選挙であること、医療保険改革法案の議会審議が大詰めを迎えていること、などから、Obama政権、民主党支配の連邦議会に対する信任投票の様相を呈している。そのため、ここで民主党が負ければ、中間選挙に対する影響は避けられない。実際、民主党候補が敗退した場合、中間選挙への出馬を諦めるという民主党下院議員はかなりいるようである。
このような切迫した状況を踏まえ、Obama大統領はこれまでの慎重姿勢を変更し、日曜日にMA州に入り、民主党候補の支援活動を行うという。Obama大統領にとっても正念場を迎えているのである。

当面の日程としては、
  1. MA州上院特別選挙の結果
  2. 連邦議会における医療保険改革法案の最終投票
  3. Obama大統領による、"State of the Union"
の前後関係が注目である。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「中間選挙(2010年)

1月15日 "Cadillac Plans"課税で合意 
Source :Democrats, Unions Reach Deal on Health Tax (WSJ.com)
"Cadillac Plans"課税について、White House、上下両院民主党幹部の間で、合意に達したようである。ただし、全体像が明らかになるまでは詳細は示されないとのこと。しかし、上記sourceによれば、
  1. 課税対象となるプラン価値の下限を引き上げる。
    1. 個人:$ 8,500 ⇒ $ 8,900
    2. 家族:$23,000 ⇒ $24,000

  2. 下限値の物価連動を、『CPI + 1%』とする。

  3. プラン価値の計算に、歯科、眼科のベネフィットは含まない。

  4. 労組との交渉により提供されている保険プランについては、法律施行後5年間の猶予(免税)を与える(課税開始は2018年〜)。

  5. これらの措置により、"Cadillac Plans"課税による税収は、$149Bから$90Bに減少する(2013〜2019年)。
ということのようである。

労組のある企業の保険プランはほとんど課税されない状態がしばらく続くことになり、これでいいのだろうが、労組のない企業の保険プランは猶予が与えられない。こういった不公平感はアメリカ社会では許容されるのであろうか。

いよいよ、"House of Cards"の一枚が抜き去られることになった(「Topics2010年1月6日(1) 両院協議は異例の形式に」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

1月14日 誰が負担するのか 
Source :Health Reform Talk: Who Will Pay For “Play-Or-Pay”? (CCH)
"Pay-or-Play"ルールは、上下両院案ともに含まれている(上下両院法案比較表)。企業に医療保険プランの提供を義務付け、提供しない場合にはペナルティを課す、というものだが、このペナルティ負担を、実際にはだれが負担するのか、というのが上記sourceの論点である。

ポイントは次の通り。
  1. 結果的には賃金の引き下げを通じて、従業員が負担することになる。実際、現金給付による賃金と医療保険プラン・ベネフィットとの間には、強いトレード・オフの関係が確認されている。

  2. 従業員の方は、ペナルティ負担よりも実際の保険プラン提供を好むはずである。これは、所得が高くなればなるほど、企業提供の保険プランによる税制上の優遇が効いてくるからである。

  3. 中小企業の場合は、賃金を下げることにより医療保険プランを用意することは事実上できないため、企業が医療保険プランを提供する可能性は低い。

  4. 従って、"Pay-or-Play"ルールは、中小企業に新たな負担を課すことになるものの、中小企業には免責規定が用意されている。

  5. 一方、大企業の多くは、医療保険プランを提供しており、両法案で影響を受けることはほとんどない。

  6. そうなると、"Pay-or-Play"ルールの影響はほとんどないと考えられ、何を心配することがあろうか。
本当にこういうことになるのであれば、企業にとっての負担はほとんどなく、公的プランまたは"Exchange"を通じての補助金(税額控除)が、無保険者対策の主なツールということになる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

1月13日 改革支持層の増減 
Source :Poll: Obama’s Ratings on Health Care, Economy Drop Lower (New York Times)
上記sourceによれば、CBS Newsによる世論調査で、Obama大統領の経済政策、医療保険改革への支持が大きく減少しているという。

当websiteでは、その傾向があることについては既に紹介した(「Topics2009年12月2日 世論調査を見ると・・・」参照)が、問題は、上記sourceにある、次のような分析である。
"Few are satisfied with how the changes under consideration in Congress will expand coverage, control costs, or regulate the health insurance industry. Instead, most say they will either go too far or won’t go far enough."
上記の世論調査は、上院案が可決された後に実施されたものなので、「医療保険改革が実現に近づいた」という意味で評価する人よりも、その内容に不満、しかも両サイドからの不満が高まっている、という状況なのだろう。

これを端的に表しているのが、Pollstarの「医療保険改革を支持するか」の動向である。支持する層が若干回復してきたものの、反対する層が急速に増えている。

Obama大統領にとっては、議会対策だけでなく、国民への説明も必要とされている。"State of the Union"が重要なポイントとなろう。

ところで、現時点で、2010年の"State of the Union"のスケジュールは発表されていない。わかっているのは、 の2点だけである(Gibbs報道官の1月8日発言)。

人気ドラマにスケジュールを左右されるようでは、"State of the Union"の位置付けも低下したものである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

1月12日 Obama vs. 労組(2) 
Source :Labor leaders object to 'Cadillac tax' for healthcare (Los Angeles Times)
11日、Obama大統領は労働組合代表者達と非公式に会談した。その内容は、大統領側から止められているため、詳細はわからない。ただ、上記sourceによれば、労働組合側は、 ことを求めたようだ。いずれも、下院案にそった要望であり、上院案の修正を迫っている(上下両院法案比較表)。

AFL-CIOの代表は、Obama大統領との会談の前に、National Press Clubで講演し、「こうした労組の要望が叶えられなければ、今年の中間選挙を労組がボイコットする可能性がある」とまで脅している。

こうした労組の圧力に気圧されてか、Obama大統領は、"Cadillac Plans"課税を支持するとは述べたものの、修正の可能性もあることを示唆したらしい(New York Times)。具体的にはどういった内容なのかはわからないが、Obama大統領自らが調整に乗り出している証左とも言える。と同時に、大統領自身が政治リスクを負ったことにもなる。またまた空手形にならなければよいが・・・。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル