11月29日 上院議員の懸念 Source : Mikulski Takes to Senate Floor on Pension Reform

上院議員のBarbara A. Mikulski (D-Md.)Mike DeWine (R-Ohio)は、年金改革法案(「Topics2005年11月18日 上院が年金改革法案を可決」参照)の投票の際には賛成票を投じていたが、法案の中身には、強い懸念を抱いているという。

上記sourceでは、特に、投資格付けに応じた積立基準、積立金拠出額の平準化の条項について、企業年金を廃止に追い込む懸念があるとしている。しかも、Mike DeWine (R-Ohio)上院議員は、両院協議会が設置されれば、協議会の委員になるともみられているそうだ(Workforce.com)。

だったら法案に賛成しなければいいじゃないかと思うが、そこがアメリカの政治だ。建前と本音と功名心が絡み合った結果が政治行動に現れる。これだから、議会の圧倒的賛成多数は、信用してはいけないのである。

11月24日 差異調整表廃止の要件 Source : Speech by SEC Commissioner Cynthia A. Glassman

このところ、SECから欧州企業への情報発信が活発である。上記Cynthia A. Glassman委員のスピーチの主要なメッセージは、次の2点である。
  1. SO法の意図せざる結果、コスト・ベネフィットのアンバランスに関する批判は十分認識しており、同法を見直す可能性がある。

  2. 米欧間の会計基準のコンバージェンスは大変望ましいことである。米国市場で差異調整表が求められていることに対する批判は十分認識している。
要するに、米国市場での上場コストを下げる方向ですよ、というメッセージを発しているのである。SO法ならびにEUの国際会計基準(IFRS)採用により、欧州企業の米国上場コストが急増し、米国市場から撤退する動きが目立つようになったことに対する処方箋を示しているのである。

ただし、会計基準のコンバージェンスについては、前に紹介したAtkins委員のスピーチ(「Topics2005年10月29日(1) 目標は『相互承認』」参照)よりは慎重なトーンとなっている。会計基準のコンバージェンスに触れた部分ついてまとめておくと、次のようになる。
  1. SECが差異調整表廃止の検討に入る前提条件は、世界中で、IFRSが統一的に解釈、適用、監督されることである。

  2. IFRSに関する差異調整表は、今年が初めての場合が殆どであり、分析は始まったばかりである。しかし、可能な限り早急に差異調整表が廃止できるように努める。
特に、上記1の要件は、結構厳しいものである。EUの中でさえ、統一的なIFRS利用を危ぶむ声がある。もしかしたら、このメッセージは、EU各国当局に対する応援メッセージなのかもしれない。

11月23日(2) 無保険者対策 第3の道 Source : Health insurance: mandatory in Massachusetts? (The Christian Science Monitor)

「Topics2005年11月21日(2) 無保険者対策の対立軸」で、「無保険者対策で、州知事が活発に動いている。しかも、共和党と民主党で真っ向から対立する手法を主張している」ことを紹介したが、Massachusetts州では、その間を行く、"第3の道"が模索されている。

同州では、約50万人の無保険者がいると言われている。Mitt Romney州知事(R)上院、下院(両院とも民主党が多数派)がそれぞれ、無保険者を一掃するための対策案を検討しているが、州知事と下院の案は、個人の医療保険加入を義務付けるものとなっている。

3者の対策案の比較は、次のようになっている。→ 比較表

また、州知事によるQ&Aも参考になろう。

知事と議会が共和党、民主党に分かれていることもあり、鮮明な党派色が出しにくいとの事情もあるのだろうが、協調してことにあたるということではよいアイディアかもしれない。

ただし、第3の道ということは、双方の立場からの批判も受けかねないということでもある。共和党的な立場に立てば「大きな政府」という批判になるし、民主党的な立場に立てば「貧困層の負担増」という批判になる。

上院、下院では法案を既に可決しており、今週にも両院協議会が開かれる予定となっている。知事の意向を踏まえた協議が行なわれることになれば、保険加入を義務付ける最初の州法が成立することになろう。

11月23日(1) 激変緩和措置はお嫌い Source : FASB's Herz Opposes Pension Smoothing (CFO.com)

FASBの議長であるHerz氏が、FEIの会合において、年金会計の見直し検討開始(「Topics2005年11月11日 年金会計の見直し」参照)について触れ、「激変緩和措置(コリドー・ルール)について、廃止または簡素化を検討することになる」と述べた。

これが実現すれば、年金資産の運用対象の時価変動が、もろにB/Sに反映されることになり、確定給付型プランを持っている企業の経営者は、目隠しをされたままジェットコースターに乗っている気分(しかも、毎四半期ごとに次は上がるのか下がるのかわからない)になるだろう。


11月21日(2) 無保険者対策の対立軸 Source : Governors Write Their Own Prescriptions for Healthcare Crisis (Los Angeles Times)

無保険者対策で、州知事が活発に動いている。しかも、共和党と民主党で真っ向から対立する手法を主張している。 連邦政府が無保険者対策に踏み込めない中で、国民の関心事項に対して、州知事が動いている。来年は中間選挙の年であり、無保険者対策も一つの争点となろう。

11月21日(1) 会計基準が株価を押し下げる Source : US pension accounting shift would hit equities (Financial Times)

先に、年金会計基準の見直しのための検討開始が決まった(「Topics2005年11月11日 年金会計の見直し」参照)。もちろん、見直し内容はこれからの議論だが、「透明性の向上」という指針からみれば、何らかの形でオンバランス化、給付債務/年金資産の時価評価、といった要素が高まることは間違いあるまい。

こうした方向性が明らかになると、運用面で、変動のより小さい、もっと言えばリターンの確実性の高い債券での運用の割合が高まることになるというわけだ。

一方で、確定給付型プランを継続することに伴う会計上の負担が高まる可能性があるため、確定給付型の凍結、確定拠出型への移行という動きが強まる。

もし、この両方の動きが明確になると、確定拠出型プランは増えるものの、その運用環境は悪化する(株式市場は低迷し、債券の金利は低下する)こととなり、企業の従業員にとっては往復ビンタ以上の打撃になるのではないだろうか。