11月18日 上院が年金改革法案を可決 Source : Senate Passes Bill to Require Full Funding of Private Pensions (Washington Post)
16日、上院が年金改革法案S. 1783 "Pension Security and Transparency Act of 2005")を、97対2の大差で可決した。他方、下院の年金改革法案(HR. 2830 "Pension Protection Act of 2005")は、Thanksgiving Day(11/24)後に、下院としての投票になる見込みである。
通常であれば、両院が可決した後、その差異を調整するために、両院協議会が開催され、統一法案となる。しかし、11月下旬の可決となると、クリスマスに近く、年を越えれば、下院は中間選挙対応でざわざわしてくる。さらに、大統領府も拒否権発動の動きを見せている(New York Times)。
上院が大差で可決ということは、どうもデモンストレーションと見ておいた方がよいだろう。つまり、どうせ、両院協議、大統領署名まではいかないので、各議員はスタンスだけは前向きに取っておく、というポーズではないだろうか。
11月16日 GMがDelphi従業員を引き取る? Source : GM, UAW Weigh Possible Buyouts Of Some at Delphi (Wall Street Journal)
「Chapter 11 → PBGCへの移管」という構図に慣れた目には、とても新鮮に映った。
DelphiがChapter 11入りしたことで、いよいよGMも、レガシーコストをPGBCに移すことになるのか、と思い込んでいた((「Topics2005年10月10日 GMの負担増」参照))。ところが、上記sourceによれば、GMとUAWの間で、Delphiの従業員の一定部分をGMに移籍させる可能性について検討しているとのことである。細部は不明だが、概ね次のような効果を狙っていると見られている。
- Delphi従業員のうち、中高年労働者の早期退職を促す。
GMはDelphi従業員の年金給付債務を負っている(詳細は不明。積立不足額は$12B前後とみられている)。早期退職者が出ることで、一時的には給付債務は増加するものの、長期的に見れば、従業員数が減ること、勤続年数が減ることにより、債務軽減効果が期待できる。また、従業員もGMの年金プランに移行する方が好ましいと感じている。
- 大幅な賃金削減を可能にする。
Delphiは、競争力を回復するために、時間あたり賃金を、約$25から$10前後まで削減する必要があるとしている。もし実現できなければ、破産裁判所に労働協定の破棄を求めざるを得なくなるという。年金移行というアメと、事業縮小(=レイオフ)というムチで、賃金削減をスムーズに実現できるかもしれない。
- Delphi従業員によるストライキ等を回避し、部品供給の安定化を図る。
賃金削減に組合が反対し、ストライキにより部品供給が滞れば、GMの工場閉鎖、収益のさらなる悪化につながりかねない。当面の経営危機を未然に防ぐことができる。
年金プランに関わるコスト削減と、喉もとの収益確保策を組み合わせたようなアイディアであり、航空各社が食らったような社会的批判をかわすことも可能と思われる。
11月15日 指名候補者の過去の記録 Source : No Right to Abortion, Alito Argued in 1985
(Washington Post)
・人工妊娠中絶の権利は憲法で認められているわけではない。
・差別禁止のための少数優遇策には反対である。
・小さな政府が望ましい。
・伝統的な価値を守ることは政府の役割である。
1985年当時、最高裁判事候補のAlito氏(「Topics2005年11月1日 右派の候補者指名」参照)が記した個人見解である。バリバリの保守派の主張である。
National Archivesが、14日に公表した公文書資料集の中に含まれている(プレスリリース)。
共和党保守派にとっては好ましいだろうが、民主党の受けはどうなるか。少なくとも、退任予定のO'Connor判事よりは右派であることは間違いない。裁判における公正な姿勢を保つことができるかどうかの判断が求められるところである。
ところで、ここまで真性保守派の候補となると、当websiteの見方も変えたほうがよいかもしれない。当初、当websiteでは、保守派のRoberts氏の最高裁長官就任をスムーズにするために、O'Connor判事の後任には中道派に近い、少なくとも保守的主張を積極的に行なわない候補者を立てるとの「密約」があるのではないか、と思っていた。
しかし、その密約がうまくいかなかったからといって、ここまでバリバリの保守派を候補に指名したのでは、民主党からの反発は半端なものではすまなくなるだろう。むしろ混乱を招いていしまう。
穿った見方かもしれないが、指名返上したMiers氏は単なる「あて馬」で、共和党保守から支持を得られないことを承知で指名したという可能性が出てくる。一旦はマイルドな候補を立てたという実績があれば、「仕方ないじゃない」という言い訳が民主党に対してできることになる。
上院でのヒアリングは、年明け早々だそうである。
11月14日 GMの労使合意成立 Source : UAW Members OK GM Health Care Proposal (New York Times)
退職者医療プランを含め、GMの医療プランにおける従業員負担の増加について、11日、労使合意が成立した(「Topics2005年10月18日(2) GM医療費削減
」参照)。UAWの投票における賛成率は61%であったそうだ。労働組合においても、医療プランにおける労組員の優遇度合や、GMの競争力への危機感に対する認識は高まっているようだ。
このようなGMの労使合意を受けて、Ford、Cryslerも追随するものとみられる。もっとも、両社とも、既に従業員負担をかなり高めており、GMとのバランスを取る小幅修正にとどまるものと思う。
また、この労使合意には、退職者医療保険プランが含まれているために、ERISA上問題がないかどうか、最終的には裁判所の判断待ちの部分もある。
これで、GMは、収益改善に一歩前進したわけだが、市場の評価はそれほど甘くない。医療保険の他にも、従業員のリストラ、施設の利用率の改善など、課題は山積している。また、過年度決算の修正の影響もあり、GMの株価は先週末わずかに改善したものの、マーケットの評価は厳しい状況が続いている(Yahoo-Finance)。
11月11日 年金会計の見直し Source : FASB Adds Comprehensive Project to Reconsider Accounting for Pensions and Other Postretirement Benefits (FASB)
10日、FASBは、年金会計を総合的に見直すための検討に入ることを決定した(「Topics2005年11月5日(1) 年金会計の見直し?」参照)。決定内容のポイントは、次の通り。
- 検討の対象になるのは、FAS87、FAS106、FAS132R。
- 検討過程を2段階に分ける。
- 第1フェーズ(2006年末まで)
年金プランの財政状況に関する重要情報が注記になっており、財務諸表に掲載されていないことについて、検討する。従って、確定給付型プランに関する積立状況について、時価評価した資産と過去勤務債務の差額により評価し、貸借対照表で認識するかどうかを検討することとなろう。
- 第2フェーズの主な検討項目(総合的な検討)
- 退職後給付を提供するためのコストに影響する様々な要素について、どのように認識し、損益計算書でどのように表示するのか。
- 給付債務をどのように計測するのか。特に、一時払いの選択が可能なプランにおける給付債務をどのように計測するのか。
- 計算仮定についてどのように開示するのか。
- 退職給付信託を連結するかどうか。
- 労働省、PBGC、IASBの見解も参照する。