Source : | Florida Worker Pension Changes Are Legal, Court Rules (Bloomberg) |
FL州政府の年金プラン改革が行われた。内容は、というものであった。
- 従業員負担の保険料として3%を徴収する
- COLAを停止する
これに対して、労組の支援を受けた州政府職員達が「州憲法違反である」として訴訟を起こしていた。争点は、次の2点。州最高裁は、いずれも問題ない、との判決を下したので、今後はすぐに実施に移されるものと思われる。
- 給付内容の変更は、州職員年金の保護を規定した州憲法に違反するかどうか。
- 年金給付は、過去の給与削減の代替措置として確保されたものであり、労組との間に締結した労使協定に違反することにならないか。
結論としては当然のことのように思えるが、ということなので、本当にぎりぎりの合憲判決のようである。しかも、ここは保守色の強いFL州なのである。
- 州最高裁の判決は4 v 3と僅差であった
- 二審では年金改正は州憲法違反との判決が出ていた
やはり、州政府職員年金の改革は、本当に難しい課題のようである。
※ 参考テーマ「地方政府年金」
Source : | Money not set aside for retiree health benefits (San Diego Union-Tribune) |
"Fiscal Cliff"は連邦政府の財政問題だが、California州では、"Wall of Debt"(負債の壁)という用語があるようだ。
この負債の壁に対応するため、CA州知事は、現在$28Bある財政赤字を、2016-7年度末には$4.3Bにまで縮減する予算案を公表した。もちろん、これは、CA州知事としてかなり野心的な提案であることは間違いない。おそらく、州議会ではもみくちゃにされることだろう。
しかし、"Wall of Debt"の問題の本質は、財政赤字を縮小できるかどうか、ということではない。それは、『どれだけ高い壁なのかがわかっていない』ということである。
上記sourceによれば、今後30年間に州政府が支払うことになる金額について、州政府は次のように説明しているそうだ。しかし、これらのベネフィットの給付債務は明確にされていない。民間シンクタンクのPEW財団の推計によれば、2012年6月時点で、CA州政府の年金プラン、退職者医療プランの給付債務、積立比率は次のようになっている。 退職者医療については、ほとんど積立資産を用意していないのである。
州政府等職員の退職者医療 $ 62.1 B 教職員年金 $ 64.5 B 州政府等職員年金 $ 38.5 B 州立大学教職員年金 $ 12.8 B 州裁判所職員年金 $ 3.3 B 総 額 $ 181.2 B
また、CA州政府の債務全体については、$617.6Bという数字が示されている(「Topics2012年9月11日 州政府債務」参照)。こうした状況を受けて、CA州債の格付けは全米で最低になっている(「Topics2013年1月10日 沈没するIL州年金」参照)。 まずは、負債の壁の高さを測ることから始めなければなるまい。
※ 参考テーマ「地方政府年金」、「自治体退職者医療/GAS 45」
Source : | States Will Be Given Extra Time to Set Up Health Insurance Exchanges (New York Times) |
州立Exchangeを創設する州でも、連邦立Exchangeを創設する州でも、その実現までには相当の課題が残されている(「Topics2013年1月8日 判断が遅れるMedicaid拡充」参照)。上記sourceでの例示は次の通り。
- 州立Exchange(連邦政府の仮認可済み)
- Utah州
- 同州では、もともと小規模企業向けのExchangeを設けている。
- PPACAを遵守するためには、個人向けの機能を新たに設けなければならないが、そのために州議会上下院(ともに共和党が多数)が動いてくれるかどうかは不明。
- 保険加入義務の遂行、保険料補助のための所得税額控除などの業務は、いずれも(連邦法に基づく)連邦政府の業務なので、州政府として担いたくない。
- Idaho州:州議会上下院(ともに共和党が多数)から(Exchange創設に関する)承認を得る方が難しい。
- 連邦立Exchange
- Oklahoma州
州政府担当官は、『連邦政府からは、州の保険規制がどうなっているのかとの情報提供を求める電話が数回あっただけだ』と述べており、目立った活動は未だ展開されていない。
最後に、HHS長官の補佐官をしていた官僚の言葉が印象的であるので紹介しておく。"PPACA(医療保険改革法)には、『HHSの仮承認』という用語も、『partnership exchange』という用語も存在しない。究極的には、各州にExchangeを創設する最終責任は連邦政府にある。州政府が今年の10月1日までにExchangeを立ち上げられなければ、連邦政府がその州でExchangeを運営しなければならない。"これは大変に重い言葉である。州政府にExchangeを創設する意思があり、連邦政府(HHS)が仮承認を与えたとしても、州議会の法律に基づいて州立Exchangeが創設できなければ、連邦政府がPPACAに基づいてExchangeを創設・運営しなければならない、というのである。そんな事態があちこちの州で発生するようなことがあれば、大混乱になること間違いなしである。この辺りに、州政府が強気で、連邦政府が下手に出ている理由がありそうである。
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/UT州」
Source : | Who Knew? Patients' Share Of Health Spending Is Shrinking (Kaiser Health News) |
2011年の国民医療費が$2.7T(前年比3.9%増)に達したことは既に紹介した(「Topics2013年1月9日 保険料上昇率のバラつき」参照)が、その中で個人が負担している割合が縮小し続けているという。
まず、2011年の国民医療費の負担者別割合は右図の通り。個人負担は、27.7%となっている。この割合は、2000年32%、2010年28%と、年を追って徐々に低下しているそうだ。
もちろん、個人の負担は増え続けているのだろうが、全体の伸び率に較べて低いことが、こうした結果につながっている。
最近の医療保険プランに関する話題は、どちらかというと負担を個人にシフトしているものが多い。このように、制度変更は個人負担を増やす方向に動いているが、その中で、個人は工夫している。
- CDHP、Exchangeの普及(企業側からみれば確定拠出型負担)
- 従業員保険料の引き上げ
- 高額免責制の普及
上記sourceでは、特に処方薬におけるジェネリックの選択が効いていると紹介している。また、経済情勢が厳しく、失業率が高かったことも影響しているだろう。
- CDHPの賢明な選択(特に若い世代)
- ジェネリックの利用拡大
- 受診抑制(よい意味でも悪い意味でも)
しかし、こうした傾向が今後とも続くとは限らないようだ。その理由として、次のような諸点が挙げられている。ところで、右図を見ていて、連邦政府、州政府・地方自治体の負担割合が、意外と高いことに少し驚いた。アメリカの医療というと、民間保険主体、とばかり思いがちだが、Medicare、Medicaid、地域医療センターなど、公的医療保障制度のウェイトがアメリカでも高くなってきていることを、認識しておく必要がありそうだ。
- 個人負担割合の減少幅が徐々に小さくなってきており、やがて転換点を迎えるとみられる。
- 高額免責制の導入がさらに進む。
- PPACAにより、保険加入が義務付けられる(加入しなければペナルティを負担)。
- Medicareの持続可能性が問題となっており、個人の負担増も必要になってくるとみられる。
※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「Medicare」、「無保険者対策/州レベル」
Source : | Medicaid Reforms and Emergency Room Visits (National Center for Policy Analysis) |
West Virginia州(WV)は、地味な土地柄からか、当websiteにはあまり登場しない。上記sourceでは、そのWV州のMedicaid改革について、紹介している。ポイントは次の通り。これだけの内容では、結局Medicaidのコスト総額が下がったのかどうかはわからない。ただし、個人の意識と総合的な給付内容は、不要な救急外来を減らすことができるといえるだろう。
- WV州のMedicaid(Mountain Health Choices (MHC))の制度改革の目的は、@個人の責任を高めることと、A予防医療によりコストを削減することにある。
- 具体的には、不要な救急外来を減らすことが最大の目標となっている。
- そのために、女性と子供の加入者には、次の2つのコースを用意した。
Enhanced Plan Basic Plan より総合的な給付内容 限定的な給付内容 加入者は、健康に責任を持ち、
健康増進に努力することを誓約する対象者のうち14%が選択 - 総合プランを選択した加入者の中では、救急外来の利用が減少したが、逆に、基礎プランを選択した者の中では救急外来は増えてしまった。
ちなみに、WV州のMedicaid加入資格は、失業中の親はFPL16%、就労している親はFPL32%と極めて低い(CBPP)。また、無保険者割合は、16%と全米平均(18%)よりは低くなっている。
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」、「無保険者対策/その他州」
Source : | San Francisco’s "Pay Or Play" Employer Mandate Expanded Private Coverage By Local Firms And A Public Care Program (Health Affairs) |
San Francisco市(SF)は、無保険者対策の一環として、2008年から、一定規模以上の企業に、拠出金の支払いまたは医療保険プランの提供義務を課している(「Topics2007年8月17日 SF市の無保険者対策」参照)。
上記sourceでは、その効果を検証しているが、概ね効果があったとの評価のようである。ポイントは次の通り。MA州同様、"Pay or Play"の政策効果は認められている。ただ、真価を測るためには、リーマン・ショック後も同様の傾向が続いたのか、という検証を待つ必要がある。
- 施行以降2年間の間に、医療保険プランを提供する企業、保険給付を拡充する企業の割合が高まっている。
- 保険料の伸び率は、他の地域と同様ながら、SF市の企業では、従業員の負担が軽減され、企業負担の割合が高まっている。
さて、PPACAはどうなるだろうか。
※ 参考テーマ「無保険者対策/SF市」
Source : | Federal Officials Scale Back Maine's Plan For Medicaid Cuts (Kaiser Health News) |
Maine州(ME)のMedicaidは、子供を持つ親に手厚くなっており、職の有無に関わらず、FPL200%が加入資格の上限となっている(Kaiser Family Foundation, Center on Budget and Policy Priorities)。
そのME州が、との提案を行なっていたが、連邦政府はこの提案を却下した。仮に認可されていれば、約2万人の低所得者が加入資格を失うことになっていた。
- FPL100〜133%の層について、加入資格をなくす
- 19〜20歳の加入資格をなくす
そもそも、現在、PPACAの要請のもと、各州はMedicaid拡充の判断を求められている中で、ME州は真逆の提案を行なっていたことになる。それだけ財政状況が厳しいということであろう。
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」、「無保険者対策/ME州」