2月8日 失業保険で州財政支援 
Source :Obama Wants Jobless Aid Help for States (New York Times)
近くObama政権が示す予算教書において、失業保険に関して州財政への支援策を盛り込むようである。上記sourceは関係者の証言に基づく観測記事である。

支援策の柱は次の通り。なお、失業保険制度の概要は、「Topics2010年11月14日 失業保険も財政危機」参照。
  1. 連邦政府からの借金を返済するための保険料引き上げと利子返済について、2011年、2012年においてモラトリアムを適用する。

  2. 2014年から、失業保険課税対象額を、$7,000から$15,000に引き上げる。連邦保険料が増収とならないよう、料率を調整する。
当面の借金返済は少し待ってやるが、その後、保険料負担を上げて健全化を図りましょう、ということである。

今年1月21日時点で、30州が連邦政府から借り入れており、その総額は$42.25Bにのぼっている(現時点での各州のローン残高)。そのうち、すでに3つの州には返済義務が発生しており、さらに20州以上が保険料を上げざるを得なくなるという。しかし、ご承知の通り、州財政は火の車であり、事実上、返済は困難になっている。

予算教書では、Medicaidとともに、失業保険に関する連邦政府提案がどのようになるのか、注目しておきたい。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策

2月7日 Medicaid加入資格 
Source :Governors Get Advice for Saving on Medicaid (New York Times)
州政府の要請に応える形で、HHSMedicaidの支出抑制策を提示した(「Topics2011年1月30日 Medicaid縮小策」参照)。主なものは次の通り。 州政府側からすると、そんなことはわかっているよ、という感じだろう。それよりもAZ州政府が求めていた加入者資格の制限はどうなのか、というのが関心事項であったはずなのに、これについては言及はなかった(「Topics2011年1月25日 AZ州:Medicaid例外措置を申請」参照)。というよりも、『検討中』で逃げてしまっている。

Obama政権の苦悩はまだまだ続くようである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル

2月6日 動かない労働市場 
Source :In a Snowy January, Job Numbers Fail to Take Off (New York Times)
失業率は下がるけれども雇用は増えない。アメリカの労働市場では、こんな傾向が続いている(「Topics2011年1月8日 失業率は下がったけれど」参照)。
  1. 失業率は0.4%低下し、9.0%となった。
  2. 労働力人口は50.4万人減少した。
  3. 非農業雇用者数は3.6万人増加した。うち、民間は5.0万人増加したが、公的部門は1.4万人減少した。
なかなか雇用者数が伸びない理由として、次のようなことが挙げられている(Los Angeles Times)。 そこで当websiteとしてのコメントをいくつか。
  1. 実感失業率」も下がっている。しかしながら、不本意ながらパートタイムで働いたり、就職を諦めたりしている人達は、相変わらず根雪のように多数存在し続けている。
  2. 全体の雇用者数は2003年レベルにとどまっており、ほとんど回復しているとはいえない。
  3. 加えて、労働市場への参加率も大きく低下してきている(季節調整値、%)。
  4. 学歴別の失業率をみると、大きな格差が生じていることがわかる。
どうもこの最後の点に、今回の労働市場がなかなか改善しない理由が隠されているような気がする。

実は、企業側の求人数はかなり回復しているにもかかわらず、失業率の改善、雇用の増勢につながっていない(単位:千人)。
これは、企業の求人が大卒等のハイスキル労働者を求めているのに対し、求職者の方のスキルがそれに見合わないという、典型的なミスマッチが起きているというのである(Washington Post)。例えば、製造業では1月に4.9万人も増えているが、そこで必要とされている労働力は、かつてのような単純労働力ではなく、IT技術などの高度なスキルである(Los Angeles Times)。

こうしたミスマッチを解消するためには、職業訓練、Community College等での技術習得が必要となるが、どうしても時間がかかる。加えて、州政府の財政赤字でCommunity Collegeの予算は厳しい現実に直面している。

Obama大統領は、今年の一般教書演説で、Community Collegeの再生を訴えたが、雇用を増やすためには本気で急いで取り組まなければ、その成果はなかなか生まれない(「Topics2011年1月26日 雇用獲得競争」参照)。

※ 参考テーマ「労働市場

2月5日(1) 同等のベネフィット:IL州
Source :Civil Unions Legalized in Illinois; Implications for Employee Benefit Plans (McDermott)
1月31日、IL州知事"The Illinois Religious Freedom Protection and Civil Union Act"に署名し、同法案は成立した。同法により、同性カップルの扱いは次のようになる。 IL州では、州憲法により、婚姻は異性の男女間によるものと規定している。これを覆すのは大変である。そこで、形式的な法律上の同性婚を諦め、同性カップル(="civil union")に異性婚とまったく同等の権利・義務を賦与することで、実質的に同じ扱いにしよう、という訳だ。もちろん、これはIL州の知事・議会ともに民主党が押さえているからこそできた荒技である。

これにより、IL州内の企業は、同性婚の場合とと同等のベネフィットを"civil union"に提供する必要が出てくる。今後は、こういう形で同性カップルへのベネフィットは広まっていくことになるのかもしれない。
同性婚の法的ステータス
州法州最高裁判決他州認可同性婚承認認可法案審議中異性婚同等権利賦与
MassachusettsA@
Vermont
ConnecticutA@
Iowa
New Hampshire
Washington, D.C.
California○→×(→○)*
Rhode Island
New York
Illinois
Maryland
New Jersey
Oregon
Washington
Nevada
Hawaii
Wisconsin
Maine○→×

* CA州最高裁判決○ → Proposition 8× → 連邦地方裁判所○ → 第9控訴裁判所で審議中
※ 参考テーマ「同性カップル

2月5日(2) Say-on-Parachutes 
Source :SEC Adopts Final Rules on Say-on-Pay, Say-on-Frequency and Say-on-Parachutes (McDermott)
1月25日、SECが、Dodd-Frank法に基づく開示ルールを公表した。経営者報酬、Golden Parachutesについて詳細を開示し、株主総会の議決(ただし非拘束)にかけることが義務付けられる。

当websiteとしての関心事項は、Golden Parachutesに関する開示である。今回の開示ルールでは、次の表のように包括的な開示を経営者個人ごとに求められることになる。
※ 参考テーマ「経営者報酬

2月3日 上院:廃案法案否決 
Source :Democrats Defeat Attempt to Repeal Health Care Law (New York Times)
予定通り、2日夜、上院で医療保険改革法廃止法案(H.R.2)が採決され、否決された。投票結果は、47 vs 51で、完全党派別であった。Obama大統領の呼び掛けにもかかわらず、医療保険改革法論議は党派色の強いスタートとなった。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

2月2日(1) 年金給付の電子化 
Source :Go Direct
先日、給与について"check"による支払いがなくなりつつあることを紹介した(「Topics2010年12月1日 "Paycards"」参照)。同じような支払い電子化の波が、社会保障給付にも及んできている。

連邦政府の支払い電子化のスケジュールは次の通り。
  1. 期 日
    • 新規の給付については、2011年5月1日以降の申請分から。
    • 既に紙のcheckで給付を受け取っている場合には、2013年3月1日から。

  2. 対象給付
    • Social Security(公的年金)
    • Supplement Security Income (SSI)(高齢者・障害者等への補足手当)
    • VA Compensation & Pension
    • Railroad Retirement
    • Department of Labor (Black Lung)
    • Office of Personnel Management benefit

  3. 払込先
    • 銀行口座
    • Direct Express Debit MasterCard
    • 2013年3月1日までに給付電子化の手続きを行わなかった場合には、強制的にDirect Express Debit MasterCardで支給
つまり、2013年3月1日以降は、すべての年金支払いは、銀行振り込みまたはDebit Cardへの預け入れとなる。

では、今現在はどうなっているかというと、公的年金とSSIの場合、6,200万人以上が給付を受けているが、16%がcheckで受け取っている。そのうち400万人が銀行口座を持っていない。 これを州別にみると、南部でcheckで受け取っている割合が高い。

さて、2013年3月1日以降、すべての支払いが電子化された場合、問題になるのは換金(引き出し)手段である。インターネット取引ですべてが済めば、現金の必要性はなくなるが、高齢者でインターネットが利用できないとなれば、そうはいかない。New York Timesの記事によれば、debit cardの場合、全米5万箇所のATMで換金可能となる。月1回の引き出しは手数料がかからないものの、それ以上になると1回につき90¢の手数料が発生する。

さらに、居住地域に該当ATMがなければ、手数料を払って引き出すしかなくなる。ただし、Alaskaの島しょ部やインディアン居留地域については、さすがに"check"の郵送を継続するようである。

ところで、日本では年金の受け取りは金融機関の口座が原則となっている。ただし、現金で受け取りたい場合には、ゆうちょ銀行で受け取ることができるようだ。

※ 参考テーマ「公的年金改革

2月2日(2) 上院で廃止法案を採決
Source :Senate Republicans Introduce Health-Overhaul Repeal (Businessweek)
下院で可決された医療保険改革法廃止法案(H.R.2)は、先月25日、上院に送付された(「Topics2011年1月20日 下院で廃止法案可決」参照)。上記sourceによれば、今日の2日にも採決が行われる見通しである。

民主党が過半数を保持している上院で同法案が可決される見込みは低いし、仮に万が一可決されても、当然大統領が拒否権を発動する。

当websiteとしての注目点は、下院と同様、上院で両党からどれだけの反乱票が出るか、という点である。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

2月1日 医療保険改革法違憲判決 
Source :Federal Judge Rules Health Law Violates Constitution (New York Times)
31日、フロリダ連邦地方裁判所は、医療保険改革法について、次のような判決を下した。
  1. 医療保険プランへの加入を義務づける法律は連邦憲法違反である。連邦議会に与えられた権限を超えている。連邦政府が上告する間は同法が有効であると認めるが、控訴裁判所が同様の判決を下した場合には、医療保険改革法全体は失効する。

  2. Medicaidの拡充に伴い州政府負担を求めるのは州政府の権限を侵す、という訴えについては却下する。現実的ではないものの、州政府にはMedicaidから脱退する選択肢が残されているからだ。
保険加入の義務付けについては、地方裁判所レベルでは判決が分かれており(Los Angeles Times)、最終的には連邦最高裁の判断が出るまで決着はつかない。

それよりも、当websiteとして注目するのは、『非現実的』とはしながらも、Medicaidからの脱退の可能性を示唆したことである。これは、実際に州議会でも検討されているという(「Topics2010年11月15日 Medicaidから脱退?」参照)。そんなことができるのか、と思うが、これが連邦制の厳しいところなのであろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル