11月17日 上院議論再開か? 
Source :Senate Begins Tackling Health Bill (New York Times)
医療保険改革法案について、Reid院内総務は、予想通り、今週中には上院本会議での議論を再開したいと考えている。しかし、本会議での議論を開始するための手続きに必要な60票を確保できるかどうかは、依然として明らかになっていないようだ。上院の審議日程をみると、来週11月23〜27日の一週間は感謝祭で休会となる。Reid院内総務は、土日や来週の休会期間を使ってでも本会議審議のための手続きを進め、感謝祭休会明けと同時に審議を開始したいとの意欲をみせている。ただし、それでもクリスマスまでに審議を終えることができるかどうかはわからないようだ。

もう一つ影を落としているのが、中絶問題である。上院民主党の女性議員を中心に、中絶への公費投入制限をはずすべきとの意見が強まっている(「Topics2009年11月12日 上院のスケジュール」参照)一方、上院民主党中道派は、「制限条項がなければ賛成票は投じられない」と明言している(Financial Times)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

11月16日 有給病気休暇 
Source :How Common Is Paid Sick Leave in the United States? (EBRI)
アメリカ企業の有給での病欠は、結構厳しい。上記sourceによれば、民間企業の従業員で、有給病欠が利用できる割合は3分の2しかない。従業員100人未満の小規模企業では、半分強しかない。パートタイマーにいたっては、4分の1強でしかない。

アメリカ人はあまり病気にならない、という訳でもあるまい。『働くことの対価としての給料』という考え方が強く残っているということなのだろう。

※ 参考テーマ「ベネフィット

11月13日(1) カトリック教会の圧力:医療改革法案 
Source :A hard choice on health care (Wasington Post)
カトリック教会は、長い間、皆保険に向けた政策を支持してきている。その意味では医療改革法案には賛成している。ただし、中絶問題だけは別である。そもそも、 Pelosi下院議長が下院法案修正に応じたのは、U.S. Conference of Catholic Bishops、さらにはローマ・カトリック教会にまで確認して、彼らが受容できると確認できたからであった(「Topics2009年11月9日 Pelosiのプラグマティズム」参照)。

当websiteでは、上下両院で中絶に関する制限に反対する動きがあることを紹介した(「Topics2009年11月9日 Pelosiのプラグマティズム」「Topics2009年11月12日 上院のスケジュール」参照)。上記sourceでは、中絶の権利に固執するよりも、3500万人の無保険者を救う方が優先されるべきではないか、との考えを示している。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「政治/外交

11月13日(2) カトリック教会の圧力:同性婚法案
Source :Catholic Church gives D.C. ultimatum on same-sex marriage issue (Wasington Post)
上記sourceによれば、Washington D.C.は、来月にも同性婚認可法案を可決する見込みである。他州の同性婚を承認する法律が発効したばかりで、随分と性急な動きである(「Topics2009年7月14日 DC-他州同性婚承認」参照)。

こうした立法運動に対し、The Catholic Archdiocese of Washingtonが、『もし法案の修正をしないのであれば、D.C.内での福祉活動は中止せざるを得なくなる』との最後通牒を突きつけた。教会としては、『同性婚を認めることになる挙式は行わなくてもいい』とはいわれても、教会の従業員や活動に携わる人々について、ベネフィットの支給などについて、同性婚を同等に扱わなければならなくなる。それは耐えられない、という訳である。

同じような動きは、NY州でも見られている(New York Times)。州議会は、州内での同性婚を認可する法案を審議しているが、財政赤字問題が解決しないことを理由に、投票を先送りしようとしている。背景には、やはりU.S. Conference of Catholic Bishopsの圧力があるようだ。それどころか、今月行なわれた連邦下院議員のNY州補選では、同性婚を容認していた共和党候補者が選挙直前で降りるという、珍事が発生している。これもカトリック教会の圧力によるものである(New York Times)。
同性婚の法的ステータス
州法州最高裁判決他州認可同性婚承認認可法案審議中異性婚同等権利賦与
MassachusettsA@
Vermont
ConnecticutA@
Iowa
New Hampshire
Maine○→×
Rhode Island
New York
Washington, D.C.
California○→×
New Jersey
Oregon
Wasington
Nevada
Hawaii
Wisconsin
昨年の選挙で大きくリベラルに振れた政治に対して、教会による組織的、戦略的な揺さ振りが行なわれているようである。当websiteは、労働市場を中心に8年近くアメリカを見てきたが、カトリック教会がこれほど積極的に政策に関与していたことはなかったように思う。

※ 参考テーマ「同性カップル」、「政治/外交

11月12日 上院のスケジュール 
Source :Reid Says Health Bill Will Be Done by Christmas (New York Times)
White Houseならびに民主党議員からのプレッシャーに応え、Reid院内総務は、 というスケジュールを示した(「Topics2009年11月9日 Pelosiのプラグマティズム」参照)。しかし、他の民主党幹部達は、年末までにObama大統領の机上に法案を届けることはできないだろう、との見方を示している。

課題の一つは、公的プランの導入である。これについては、Lieberman上院議員(I)が、既に反対の立場を示している(「Topics2009年11月9日 Pelosiのプラグマティズム」参照)。また、昨日も示したように、州知事選との兼ね合いも考慮しなければならない。

もう一つ、大きな課題として浮上してきたのが、中絶の取り扱いである。下院法案で修正条項として盛り込まれた中絶に対する制約に対し、民主党の女性上院議員達も一斉に反発している。上記sourceで名前が挙げられているだけでも4人はいる。

これら二つの要素だけでも、法案審議を開始するための60票が確保できないのである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

11月11日 公的プランと州知事選 
Source :'Opt-Out' Proposal Puts State Leaders to the Test (New York Times)
医療改革法案について、上院案と下院案の違いの一つとして、公的プランの制度設計が挙げられている(「Topics2009年11月10日 Obamaのプラグマティズム」参照)。下院案では、全国一律の公的プランを創設するとなっている「Topics2009年11月1日 下院案公表」参照)のに対し、上院のReid院内総務は、州政府が不加入を選択("opt-out")できる公的プランを検討している「Topics2009年10月27日 Reid vs. Snowe (2)」参照)。

この"opt-out"できる公的プランと、来年11月の州知事選の関係について、上記sourceで解説している。

金銭的なことだけを考えれば、公的プランに関しては州政府の負担が発生しないため、わざわざ不加入を選択する理由はほとんどない。むしろ、Medicaidの拡充に伴う負担増の方が頭が痛いはずである。

しかし、ことはそれほど簡単ではないらしい。仮に『"opt-out"付き公的プラン』が導入された場合、州政府としては、
  1. 無保険者の規模
  2. 保険市場の競争状態
を勘案しなければならないという。

現在、全米の州知事は、民主党26人、共和党24人となっている(NJ州、VA州選挙結果後)「Topics2009年11月6日(1) 同性婚論議2敗」参照)。このうち、来年11月には37州で知事選が予定されており、現職知事の党派別は、民主党19人、共和党18人となっている。

以下、上記sourceで示された各州事情は次の通り。 ちなみに、先週行われたNJ州、VA州の州知事選で勝利した共和党候補者は、「公的プランに反対」または「不加入を選択する」と公言していたそうだ。

ところで、MA州はどう対応するのだろうか。ただ乗りできるから公的プランに乗り換えるのだろうか。それとも、超党派で作り上げてきた皆保険制度を維持するために"opt-out"を選択するのだろうか。興味のあるところである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/MA州