10月29日(1) Pelosi & Reid 
Source :Pelosi Backs Off Having Set Rates for Public Option (New York Times)
Pelosi下院議長が、バーを下げ始めた。下院の医療改革法案に盛り込む「公的プラン」で、医療機関に対する償還額については、政府で一律に決定するのではなく、民間の保険プランと同様、交渉ベースとする腹を固めたようだ。

リベラル派の主張では、一律政府が決めることで、保険料を抑制しようという考え方であったはずであるが、そのまま突っ走れば、中道派の賛成を得られず、法案が可決できないとの読みになったようだ。

また、医療機器メーカーの拠出金、Medicaidの対象者拡大(〜FPL 150%)など、上院財政委員会のアイディアを取り入れようともしている。

こうした動きを見ると、やはり、Pelosi下院議長とReid上院院内総務は、水面下で握っていると見ておいた方がよさそうだ(「Topics2009年10月27日 Reid vs. Snowe (2)」参照)。

※ 参考テーマ「

10月29日(2) Maine州民選挙 
Source :Focus of Gay-Marriage Fight Is Maine (New York Times)
11月3日(火)、Maine州で州民投票が行われる。そのQ.1が、「同性婚を認める法律を拒否しますか?」というものである。

同州では、5月に同性婚を認める法案が成立(「Topics2009年5月7日 New Englandが同性婚の聖地に」参照)し、9月にも施行することになっていたが延期され、州民投票の結果を待って施行することとなっている。

Maine州は、アメリカの東端にあり、人口も少ないため、それほど注目されるような州ではないが、この同性婚に関する州民投票の結果は、重要な意味を持つ。もしも「同性婚認可法を拒否する」との結論が出れば、CA州に次ぐ結果となる(「Topics2008年11月6日 選挙結果(2)-Proposition 8」参照)。そうなると、同性婚を推進しているのは裁判官や政治家ばかりで、一般国民(州民)が認めているわけではない、との認識が広がってしまうというのである。
同性婚の法的ステータス
州法州最高裁判決他州認可同性婚承認認可法案審議中異性婚同等権利賦与
MassachusettsA@
Vermont
ConnecticutA@
Maine
Iowa
New Hampshire
Rhode Island
New York
Washington, D.C.
California○→×
New Jersey
Oregon
Wasington
Nevada
Hawaii
Wisconsin
※ 参考テーマ「同性カップル

10月28日(1) 失業給付の延長を議論 
Source :Senate votes to take up jobless benefit extension (AP by BusinessWeek)
上院で、失業給付延長に関する議論(H.R. 3548)が本会議で行われることになった。

失業後、最大26週間の失業給付期間があるが、これを使い切ってしまった場合には、さらに最大14週間の給付期間を与える。また、失業率の高い(8.5%以上)の州(27州)については、さらに6週間上乗せする、という案となっている。これにより、失業後最大46週間、給付が受けられることになる。

これと併せて、初めて住宅を購入する場合の税額控除($8,000)についても延長してはどうか、との議論が行われる見込みである。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策

10月28日(2) 病気休暇の現金化 
Source :Changes in sight for federal employees (Washington Post)
先週22日、National Defense Authorization Act for Fiscal Year 2010 (H.R. 2647)可決され、大統領府に送付された。

これにより、連邦政府職員が退職した際、使い残した病気休暇があった場合、"credit"として付与されることになる。

※ 参考テーマ「ベネフィット

10月27日 Reid vs. Snowe (2) 
Source :Senate health bill will embraces 'public option' (AP)
先日紹介した通り(「Topics2009年10月23日 Reid vs. Snowe」参照)、上院のReid院内総務は、州政府が不参加を選択できる「公的プラン」の創設を、医療改革法案に盛り込む意向を表明した。ただし、法案の詳細、制度設計は明らかになっていない。

これに対し、当初から懸念を表明していたSnowe上院議員は、『とても失望した』とのコメントを発表している。Reid院内総務は、Obama大統領が最も欲していた共和党の1票を失おうとしている(「Topics2009年10月14日 共和党の1票」参照)。

また、民主党内でも中道派と見られている、Bill Nelson上院議員(D)Blanche Lincoln上院議員(D)とも、Reid院内総務の提案に、明確な支持表明は行なっていない(「Topics2009年10月8日 財政委員会採決の行方」参照)。

こうしてみると、Reid院内総務は、根回しの末、60票を確保したというよりも、見切り発車したという印象を持つ。それが証拠に、州政府に選択権を認める「公的プラン」が否決された場合、Ried院内総務は、異なるバージョンの「公的プラン」に修正して、再挑戦するとみられている(New York Times)。

ではなぜ、見切り発車に踏み切ったのか。上記sourceによれば、Pelosi下院議長が、"consumer option"という言葉を使って、強硬な反対派の懐柔を試みているという。Reid院内総務、Pelosi下院議長とも、一律適用ではない、加入する、または加入しない選択権は残されているんだよ、という論法で一致している。このような主張が同じ時期に出てくるということは、両者の間に何らかの意思疎通があるとみてよいのではないだろうか。つまり、水面下では、着々と上下両院の合意に向けて布石が打たれているのではないか、ということである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

10月24日 GMのベネフィット 
Source :The Special Master for TARP Executive Compensation Issues First Rulings (Department of Treasury)
GM salaried staff get only consumer-driven health plans (Business Insurance)
GMのベネフィットが大きく変わりつつある。

まず、報酬体系だが、TARPにより支援を受けている企業については、トップの経営陣の報酬を短期業績と切り離し、長期業績と連動させるようルールが定められた。現金による報酬には上限が設けられ、株式により数年後でなければ実現できないようにされている。また、golden parachutreも大幅な制限が加えられている。

また、事務系従業員の医療ベネフィットは、高免責額を伴う拠出型プラン(CDHP)に限定された。

破綻した企業のベネフィットは、ドラスティックに変更される。

※ 参考テーマ「ベネフィット」、「経営者報酬」、「CDプラン」、「PBGC/Chapter 11

10月23日 Reid vs. Snowe 
Source :Senate Leader Takes Risk Pushing Public Insurance Plan (New York Times)
医療保険改革法案の上院案をめぐり、Reid上院院内総務の動きが活発になっている。Reid院内総務は、もともと「公的プラン」創設を支持しており、下院の動きを考慮すれば、上院案にも「公的プラン」創設を盛り込んでおきたいところである。

ところが、「公的プラン」創設は上院財政委員会で否決されており、どうすれば「公的プラン」創設に反対されずに済むのか、という知恵の出し所となっている。Reid院内総務は、政府が運営する「公的プラン」を創設するものの、州政府に公的プランへの参加の選択権を与えることでどうか、と考えているようだ。

これに対し、上院の民主、共和両党の中道派は、会合を設け、全国一律の連邦政府「公的プラン」の創設に反対することを確認したそうだ。中でも手強いのは、Snowe上院議員で、『法案のもたらす影響を慎重に検証すべきであり、拙速はいけない。焦れば民主党は、Medicare償還額確保法案と同じ轍を繰り返すことになる』と警告を発している(「Topics2009年10月22日 Medicare償還額削減の見直し」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

10月22日 Medicare償還額削減の見直し 
Source :Senate Democrats Hit Snag With Doctor Payment Bill (New York Times)
Medicareの持続可能性確保のために採られた措置が、時限爆弾のように時を刻んでいる。

もし、連邦議会が何も対策を取らなければ、
  1. 2010年のMedicare償還額は21%削減され、
  2. その後、数年間にわたり、毎年約5%ずつ削減される
ことになっている。

この時限爆弾が爆発すると、大変なことになる。Medicare加入者の診療は行わないという医療機関が続出し、パニックにすらなりかねない。こうした事態に対し、医師の団体であるAMAと、高齢者団体としては最強のAARPが、連邦議会に対して何とかしてくれ、と圧力をかけている。

これを受けて、上院民主党は、10年間で$247Bを要するMedicare償還額確保法案(S. 1776)を検討していたが、共和党の強い抵抗と財政赤字拡大への配慮から、当初案を断念したそうだ。今後は、償還額を確保するための財源探しが議論の焦点となる。

Medicareの制度改正は、@財政負担、A高齢者の受診と負担、B制度自体の持続可能性、C医療保険制度改革といった多岐にわたる影響を考慮する必要がある。今後、年末に向けて神経質な議論が続くものと思われる。

※ 参考テーマ「Medicare

10月21日 Medicare保険料引き上げの影響 
Source :CMS ANNOUNCES MEDICARE PREMIUMS, DEDUCTIBLES FOR 2010 (CMS)
上記sourceの通り、2010年のMedicare保険料(Part B,基本部分,月額)は、$96.4から$110.50に引き上げられる。また、所得に応じた付加部分もかなりの幅で引き上げられる。ただし、この引き上げ規定が適用されるのは加入者の27%にすぎず、残りの73%は引き上げ規定が適用されず、据え置きとなる。

そのからくりは、"hold harmless"と呼ばれる規定で、Medicare Part Bの保険料の引き上げ額は、Social Security(公的年金)の増分を超えることはできない、というものである(New York Times)。当websiteで紹介した通り、来年、公的年金にCOLAは適用されない(「Topics2009年10月16日 COLA適用せず」参照)。従って、公的年金の増分はゼロであり、Part B保険料も上げられない、というわけである。

この"hold harmless"規定により、73%の加入者の保険料は据え置きになるのだが、据え置きにならない27%の加入者とは、どういう人たちなのか。
  1. Medicare新規加入者 ⇒ 3%

  2. 中高所得者(年間所得$85,000以上) ⇒ 5%

  3. 公的年金からMedicare保険料を天引きされていない人 ⇒ 19%
    うち、MedicareとMedicaidの両方に加入していて、Medicaidが保険料を負担している人 ⇒ 17%
こうしてみると、Medicaidの負担増、すなわち連邦政府と州政府の負担増が求められることが明らかになってくる。こうした流れを阻止すべく、連邦議会下院では、Medicare保険料引き上げを全面的に保留する法案(HR 3631)が圧倒的多数で可決されている(9月24日)。しかし、同法案の上院での審議はまったく行われていない。

上院では、医療保険改革法案の内容が議論されていて、そこまで手が回らないというのが実情であろう。また、Medicare改革も医療保険改革の重要な課題であるため、保険料だけ取り上げての議論はしにくいと思われる。

ところで、"hold harmless"規定発動の引き金となった公的年金のCOLA不適用に関し、Obama大統領が提案した$250支給の継続案に対しては、公的年金専門家からは、『無意味であり、景気刺激にもつながらない』と評判が悪いらしい。かなりリベラル色が強いと思われるMunnell教授も、さんざんな評価を下している(USA Today)。

※ 参考テーマ「Medicare」、「公的年金改革