Topics 2003年7月1日〜10日     前へ     次へ


7月4日 DBの情報公開
7月5日 大統領選候補者たちの資金調達
7月5日special Barry Whiteはもう聞けない
7月8日 処方薬Medicare改革法案の争点
7月9日(1) UAL-ESOPの評価
7月9日(2) FLSA改正案への反対意見

7月4日 DBの情報公開 Source : Action Alert No. 03-26 (FASB)
「Topics 6月27日 FASBの新ルール」で紹介した、FASBの仮決定が正式に公表された。6月25日の決定は次の通り。

June 25, 2003 Board Meeting

Pension disclosures. The Board continued its discussion of disclosure requirements for defined benefit pension plans and decided to:

  1. Not require further breakdown of asset categories, but to encourage this disclosure if a company deems this information to be useful in understanding the risks and expected long-term rate of return on assets for each asset class.

  2. Not require duration information, reversing its previous decision, and instead agreeing that projected benefit payments would be a more useful disclosure.

  3. Not require sensitivity information for any of the assumptions discussed. These assumptions included return on assets, discount rate, and rate of expected future salary increases.

  4. Relax the disclosure requirements for nonpublic entities, exempting them from the disclosure of income statement classification of net pension cost. The Board also agreed to retain the exemptions for nonpublic entities found in FASB Statement No. 132, Employers・Disclosures about Pensions and Other Postretirement Benefits.

  5. Require interim disclosure of: (a) the income statement classification of net pension cost, (b) a breakdown of the elements of net pension cost (such as service cost, interest expense, and return on asset components), and (c) significant changes in contributions or expected contributions to pension plans from what was previously disclosed.

  6. Require separate disclosure, in a tabular format, of the assumptions used to value pension obligations and those used to determine net pension cost.

上記のうち、5. が、DBプランの情報公開を四半期ごとに行うよう求める項目となっている。

そして、素案の公表は第3四半期中、最終決定は今年12月を目標に、引き続き議論を続けていくとしている。この流れが決定となれば、日本の会計にも影響が及んでくるだろう。


7月5日 大統領選候補者たちの資金調達 Source : Dean's Surge in Fund-Raising Forces Rivals to Reassess Him

上記Sourceでは、速報値ながら、大統領選候補者たちの資金調達の進捗状況(第2四半期)を報じている。正確には、7月15日に報告されるそうだが、結構面白いので、ここでまとめておきたい。

候補者名4〜6月上半期参 考
Sen. John Kerry$6M$13M 
Sen. John Edwards$5M$12.4MTopics 5月7日 藪医者 vs. 救急車追っかけ弁護士
Dr. Howard Dean$6.5M$10.1MTopics 6月25日(2) Howard Deanの皆保険構想
Sen. Joseph Lieberman$5M$8M 
Rep. Richard Gephardt$4.5M$8MTopics 4月29日 Gephardtの医療皆保険提案
Sen. Bob Graham-$3M 
Rep. Dennis Kucinich-$1M 
Rev. Al Sharpton-- 
Carol Braun$0.15M$0.225M 
    
President G. W. Bush$34.2M- 


そこで、気付いた点をいくつか。

  1. この資金の集まり具合を見る限り、上位5人までに既に絞られているとみてよいだろう。

  2. 民主党候補者の中では、Sen. Howard Deanの資金調達が、第2四半期トップとなっている。これは、正式な立候補表明が6月23日だったので、その勢いが表れているものと考えられる。この勢いが今後とも続くかどうか、ちょっと難しい。彼は、医者として医療皆保険制度導入を強く主張しており、具体的な提案も行っている。しかし、「イラク戦争反対」「ゲイカップルの承認」「銃規制反対」を主張しているため、それほど支持率が上がるとは思われていない。

  3. とはいえ、インターネットを通じた資金調達が大半を占めているDean氏の手法に、ライバル達は注目しているだろう。

  4. Bush大統領の圧倒的な資金力には、やはり目を見張らざるを得ない。第2四半期の資金調達は、すべての民主党候補者達の資金調達全額をも上回っている。Bush大統領の人気の強さを裏付けるものといえる。

7月5日special Barry Whiteはもう聞けない Source : Singer Barry White Dies at 58 (Washington Post)

とても悲しいです。もうあのやさしく太い声を聞くことはできません。あの美しいメロディを聞くことはできません。

Good-bye "Love's Theme", Good-bye Baryy White.

7月8日 処方薬Medicare改革法案の争点 Source : House-Senate Conference Committee Faces Several Hurdles in Reconciling Medicare Bills (Kaisernetwork)

独立記念日に伴う議会休止も明け、いよいよMedicare改革法案の両院協議が開始される。上記Sourceは、両院協議で争点となるポイントをまとめたもので、大変参考になるので、ポイントをまとめておきたい。

まず、比較表を改めておきたい。

Medicare改革法案(上下院案比較表)(再改訂版)
上院案下院案
処方薬保険プロバイダー民間保険
ただし、民間保険が参入しない地域については、政府が提供する
民間保険
保険料($/月)3535前後
免責額($/年)275250
保険カバー率 $276〜4,500 50%
$4,501〜5,800  0%
$5,801〜    90%


 $251〜2,000 80%
$2,001〜4,950(所得に応じて変動)  0%
$4,951(所得に応じて変動)〜    100%
夫婦で12万ドル以上の所得がある場合、
100%カバーの下限が引き上げられる
低所得者層への配慮低所得者に補助あり低所得者に補助あり
処方薬割引カード2004年〜 割引率15〜25%2004年〜 割引率15〜25%
予防医療(オプション)選択した場合に免責額引き上げ
高額医療保険・予防医療保険(オプション)民間保険プランでオプション提供可
競争原理の導入2010年〜公的Medicareプログラムと民間プランとの間の価格競争を導入
在宅診療在宅診療が必要な場合(60日間)には、40〜50($/日)の自己負担を求める
民間保険プランへの償還率2004年からの引き上げ
田舎地域への割増償還$25.3B (2005〜2014)$27.2B (2004〜2013)
コスト総額10年間で4,000億ドル10年間で4,130億ドル


  1. ミーンズテスト
    上下両院の共和党員は、何らかの形でミーンズテストを導入すべきとしている。特に、上院Majority leaderのBill Fristは、何らかの形で導入することになるだろうと述べている。しかし、民主党の有力上院議員であるEdward Kennedyは、ミーンズテストに対して徹底抗戦の構えを見せている。

  2. 価格競争の導入(下院案)
    「民間保険プランとの競争を導入することで、公的制度であるMedicareを近代化できる」との主旨だが、反対者は、「健康で豊かな高齢者が民間保険プランに移籍することになり、Medicareにコストがかかってしまうことになる。特に伝統的な出来高払いのプログラムは消滅してしまうだろう」と主張している。下院の共和党首脳には、この条項を強く支持する動きがある。

  3. 在宅診療自己負担(下院案)
    コストがかかるのだから自己負担は当然というのが下院案だが、徴収コストが甚大となるため、在宅診療を提供する医療機関が患者を選別する可能性が出てくるとの批判がある。

  4. 民間保険プランへの償還率
    償還率のアップが民間保険プランのMedicare参入を促進するインセンティブとなる。民間保険会社は、2004年からのアップを求めており、それが下院案には反映されているが、上院案にはない。民間保険会社は、これが定着しなければ、民間プランの参入は見込めないと危惧している。また、医療機関の医療費は、大きな幅があるのに、地域ごとに一本の料金体系が求められており、現実的な対応ができないとの批判も出ている。また、人口の少ない田舎では、保険会社の利益が得られないとも見られている。

  5. MedicareとMedicaidの分担
    MedicareもMedicaidも受給資格を持つ人、つまり低所得の高齢者の処方薬代については、現行制度では州政府が負担している。州側にはこの負担を連邦政府が負うべきだとの意見が強い。全NY州知事など、多数の首長、地方議会指導者達が、連邦議会にロビー活動を行なう予定だ。しかし、これは相当なコスト増となるため、反対も強い。

  6. 田舎の地域への支援
    上院案、下院案とも、田舎の地域に民間保険プランが参入するよう、支払いを多くする条項を定めている。田舎出身の連邦議員達にとっても重要な条項である。しかし、都会の地域の保険プランが割を食う話でもある。結局、都会に住む所得の少ない高齢者が不公平になる。

こうしてみると、単に処方薬をカバーするかどうか、だけでなく、大きな改革の芽が埋め込まれていることがわかってくる。それだけに、両院が合意に達することができるかどうか、難しい側面も多々あるということになるのだろう。夏休み前に合意が成立するかどうかが鍵であろう。

7月9日(1) UAL-ESOPの評価 Source : "But What About United Airlines?" Answering Tough Questions (The ESOP Association)
上記Sourceは、UALの破綻に端を発した、ESOP是非論に関する記事である。破綻直後に盛んに行われていた議論に対して、ESOP Associatoinがスタンスをまとめたものであるが、最近、リバイズされて再掲載されたので、改めて読んでみた。団体の性格上、ESOPの悪口はなく、制度擁護が主張となっている。しかし、その点を割り引いたとしても、ESOPの活用法として勉強になる点がいくつかあるので、そのポイントをまとめておく。

  1. Visionが必要
    今後の企業の活動方針の中で、ESOPがどのような位置付けになるのか、どのような役割を果たすのか、オーナーとしての権利と責任を明確にしていく必要がある。そうした面で労働組合や経営陣のリーダーシップがなければ、破綻すべくして破綻する。

  2. チーム活動
    ESOP導入当初、UALもチーム活動を行っていた。「Best of Business」というチーム活動は、かなりのコスト削減効果をもたらし、従業員もチームのため、顧客のために働くという意識改革を実践していた。その結果、従業員一人当りの売上高は10%も改善し、無断欠勤も74%減少した。しかし、1998年以降、労働組合や経営陣からの明確なサポートがなくなったため、チーム活動は沈滞していった。

  3. 中間管理職へのサポート
    経営陣の大半が、ESOPがある中での経営がどうあるべきか、経験も関心もなかったために、中間管理職は旧式の慣習に固執し、従業員株主制度に悪影響をもたらすようになってしまった。

  4. 外部へのメッセージ
    ESOP導入により、従業員と企業の関係は変化する。その変化を、内外に示す必要がある。当初の頃のTVコマーシャルに、「Fly Our Friendly Skies」というのがあった。まさに企業と従業員の関係の変化を示すものであったが、その後は同様なメッセージは出てこなくなった。UALの中で従業員持株制度が無視され始めた証拠である。

  5. 従業員の期待
    UALの従業員は、企業経営にいくらかは影響力を持つようになるものと期待していたし、何か重要な決定が行われる際には相談を受けるものと思っていた。US Airwaysの買収話の際には、そのような期待に応えることができたが、その後は、従業員の見えない所で決定がなされていった。従業員はパートナーとしてみなされなくなっていた。
結局、UALは、ESOPというツールを導入しながら、その良さを活用しようとしなかったために、破綻に至ってしまったのだろう。後から検証してみれば、労働コスト削減のバーターとして導入されたESOPは、結局経営陣にとっては負担の先送り策に過ぎなかったということである。

日本の企業年金でも、退職給付債務から逃れたいばかりに、確定拠出に移行したり、キャッシュバランスに移行しようとする動きがある。また、マスコミもそうした動きに敏感に反応している。しかし、企業年金は、本来、給与体系や人事政策と密接に結び付いたものである。そうした本質を忘れて目の前の負担逃れだけをしようとすれば、仏作って魂入れず、で、どんな制度もうまくいくはずがないのである。

7月9日(2) FLSA改正案への反対意見 Source : Democrats Object to FLSA Changes (BLR)

今年4月に、公正労働基準法(FLSA)の改正案が、DOLから公表された(「Topics 4月16日 公正労働基準法改正案」参照)。パブリックコメントの募集期間である3ヵ月が終わりかけ、改正案に対する反対意見が強まっているそうだ。主に、反対しているのは、民主党議員150人、WorldatWorkなどの労働関係シンクタンクである。

前にも書いた通り、改正案は、残業支払い対象となるサラリーの基準額を大幅に引き上げている。標準的な労働者で、年収$8,060から$22,100になる。従って、年収基準からいえば、対象労働者は大きく増える可能性があるのだが、反対を主張している人達に言わせれば、その収入レンジの人達は、たいてい管理職になっており、同法の対象外になっているため、実際にはほとんど増えないというのだ。彼らは、むしろ、管理職待遇になっている人達でも、同法の対象として、残業代が支払われるようにすべきだと主張している。

このような意見に対して、DOLは、対象外となる従業員は全米で64万人であるとの推計を示したが、Economic Policy Instituteや民主党議員の推計では、800万人にも達するという。基本的な推計部分でこんなに乖離があるようでは、なかなか法改正にまでは至らないだろう。

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