2月18日 ERISA vs States (6) Source : ERISA Pre-emption : Implicatons for Health Reform and Coverage (EBRI)
久々のEBRIネタである。上記sourceでは、ERISAと州医療保険法改正について、歴史的経緯も踏まえた事実の確認が行われている(ハイライト部分は管理人による)。こうしてみると、ERISAにおける医療保険関連部分への視点が、時代とともに少しずつ変わってきていることがわかる。
内容としては、
- ERISAの歴史
- ERISAの構成
- 主な最高裁判例
- ERISAの対象となる人口の推移
- 最近の州レベルでの医療保険改革の動向
ときて、最後の結論として、次の諸点を強調している。
- 今のERISAのもとで、州レベルで企業が提供する医療保険プランに関する規制が進んでいくと、管理コストの観点から、企業は現在提供している医療保険プランについて見直さざるをえなくなる。特に、中小企業は、プラン提供の中止を検討することになろう。
- 今の政治情勢からみて、次の政権で、全国民をカバーする連邦レベルでの単一保険制度が導入される可能性は低い。しかし、その代替策として、州レベルで企業提供の保険プランに対する規制を強化していけば、結局は企業保険プラン自体が減少してしまう可能性がある。
このような警告めいたコメントは、EBRIにしてはめずらしい。それだけ、MA州、(頓挫したものの)CA州の"Pay or Play"法(案)の動きは、影響力があるともいえる。
ただし、ここで残念ながら、一つコメントしておかなければならない。実は、上記sourceの2ページ目に、『今号は、全米商工会議所の支援を受けて発行した』と記されている。こんなことはめったにない、というか、今まで気付いたことがないくらい、珍しいことである。
EBRIは特定の政党や団体の立場を代表しないことでその存在意義を高めてきたのだが、今号はそうはなっていないようだ。上述の結論も、全米商工会議所(USCC)がそう主張している、と言われれば、納得もできる。当然、USCCも、EBRIの支援団体の一つ(Contributing Members)ではあるが、その貢献度は低い方であり、影響力を露骨にEBRIの活動に及ぼすことはなかったと思う。それだけ、USCCが危機感を強めているということなのか、EBRIの活動基盤が苦しくなっているということなのか、外部からはうかがい知ることはできない。ただ、そういった注意書きを踏まえて、上記の結論部分を読んでおく必要がある。
2月15日 UT州の保険改革 Source : Utah Gov. Huntsman Willing To Impose Mandates if Insurers Do Not Offer More Affordable Plans (Kaisernetwork)
Utah州のHuntsman知事が、州議会とともに保険改革を進めている。その主な項目は次の通り。
- 転職の際にポータブルとなるような保険プランの提供を促す。
- そのためのいくつかの州規制を緩和するとともに、現在よりも安い保険料で一定レベルの保険内容を提供するよう、保険会社に求める。
州下院は既に全会一致で法案(HB133)を可決しており、上院の可決もほぼ確実視されている。
Huntsman知事は、
- この法案によって無保険者がどれだけ減少するのか、今年一杯、見守る
- 効果がないということになれば、州民の保険加入義務付けも真剣に検討しなければならない
と発言しているそうだ。同知事は、州民30万6,000人が無保険者となっている実態も重視しており、今年中にこうした無保険者の半減を目指すとも発言している。無保険者割合を見てみると、2006年で17%と、全米平均(16%)を1ポイント上回っている。無保険者率は、全米でみても悪い方に属する。
Huntsman知事は、今年改選期を迎えることもあり、州民向けのリップサービスをしている部分もあるだろう。ただ、UT州というのは、伝統的に共和党の地盤であり、現に、州知事、上院、下院とも共和党が制している。そうした政治状況の中で、保険加入の義務化が議論されようとしていることに注目しておきたい。
2月14日 プロの眼
12日、三菱UFJ信託銀行が『海外における退職給付会計見直しの動きについて』と題するセミナーを開催した。残念ながら、急用で途中退席してしまったのだが、その内容が極めて適切でわかりやすいものとなっていた。
アメリカ基準、国際会計基準の見直しの動向について説明したのち、日本の退職給付会計への影響とその対処方法の選択肢まで示されていた。当websiteでも年金会計の動向として追っかけているところだが、さすがにプロは違う(「Topics2008年1月28日(2) FAS158邦訳」参照)。当日の配布資料は本当に貴重である。
経済界が代行返上、確定拠出年金創設を求めてからおよそ10年が経つ。配布資料の中に、会計基準変更への対応として、財務戦略と人事戦略に基づく総合的な判断が必要、との記述を読んで、当時と隔世の感がある。企業年金というと人事の世界、代行返上や会計基準というと経理の世界、と二分されていたのがまるで嘘のようである。
2月13日 GGRA 最高裁に提訴 Source : GGRA PRESS ROOM
予定通り(「Topics2008年1月27日 レストラン協会は最高裁へ」参照)、今月8日、Golden Gateレストラン協会(Golden Gate Restaurant Association)は、SF市無保険者対策の差し止めを求めて、最高裁に提訴した。第9控訴裁判所での審理は継続中であるが、これとは別に起こした行動である。
いよいよ、ERISAを巡る最高裁での議論という局面を迎えることになった。