3月30日 HSA増進法案 Source : Bills on HSAs (AIS Health)

さる15日、George Allen上院議員(R-Va)が、HSAsの拠出枠拡大を目指した法案(S.2424)を提出した。現行制度では、「HDの年間免責額」と「$2,700(家族は$5,450)」の少ない方の額が、HSAへの拠出上限額となっている。この上限額を、「HDの年間免責額」と「$5,250(家族は$10,500)」の少ない方の額としようという提案である。

上記sourceでは、同様の法案が全部で5本くらい出てきそうだが、いずれも成立は難しいとみている。その理由は、次の2点。
  1. 民主党に反対が多い。
  2. 中間選挙を控え、支持率が下落し続けるBush大統領との距離を置きたいという共和党議員が多い。
今年1月の一般教書演説で、Bush大統領は、HSAsの増進を謳っている(「Topics2006年2月2日(1) Pro-Growth Economic Policies」参照)。そのBush大統領とは距離を置きたいから、HSA関連法案を積極的に支持しないというのである。

3月28日(2) 年金プランを凍結する訳 Source : The Case for Freezing Pension Plans (Plansponsor)

上記sourceによれば、100人以上の財務担当役員にインタビューし、次のような結果が出ている。
  1. 57%の役員が、年金プランに関するリスクを、他の財務リスク、業務リスクよりもかなり大きいと認識している。

  2. 積立状態が良好な企業では、短期では管理可能とみているものの、長期的には企業の信用格付けに影響をもたらす可能性があると見ている。

  3. FASBが年金会計のコリドー・ルールを廃止すれば、72%の役員が年金プランの凍結を検討すると述べている。

  4. 積立基準が厳しくなれば、62%の役員が年金プランの凍結を検討すると述べている。

たまたま同時期に、Alicia Munnell (Boston College)が、同じテーマでの調査結果を公表した。そのポイントは次の通り。
  1. 企業が年金プランを凍結したいと考える理由は、次の3つ。
    1. 労働コストを削減したい。
    2. 医療コストの増大に対応するため。
    3. 年金プランが抱える財務リスクへの懸念

  2. 最後の財務リスクへの懸念は、さらに3つのリスクに要因分解できる。
    1. 経済的リスク(給付債務と年金資産の差額が大きく変動する可能性)
    2. 人口動態的リスク(従業員長生きのリスク)
    3. 法的リスク(保険料の急増、年金改革法案による規制強化)
    4. 会計リスク(会計基準、開示等の変更)

  3. 経営幹部用の非適格年金と、一般従業員用の適格年金という二層構造ができつつある。ある推計によれば、経営幹部の受け取る非適格年金の額は、それ以外の報酬総額の34%に相当するともいわれている。これにより、一般従業員用の適格年金の重要性が相対性に薄れ、プラン凍結に繋がっているとの仮定が成り立つ。面白いことに、非適格年金プランは最終年俸と勤続年数によるものが多いのに対し、一般従業員については、確定拠出型への移行が増えている。

  4. 英国やカナダでは、医療費の増加が続いているわけではなく、年金プランの規制強化が行なわれているわけでもないのに、年金プランの凍結が相次いでいる。これは、国際的な競争が激化していることが大きな要因になっているものと思われる。また、世界的な金利の低水準が続いていることも影響しているかもしれない。

3月28日(1) PBGC理事長退任 Source : PBGC Executive Director Bradley D. Belt Announces Departure (PBGC)

PBGCBelt理事長が、大統領宛に辞任の意向を伝える手紙を提出した。

2年という短い期間であったが、破綻企業の問題、年金改革法案など、かなりの難問を抱え、激務であったと思う。そのBelt理事長に、手向けの花を贈ることができるのかどうか、両院協議会での議論が注目されるところである。

3月23日 PBGCの存続意義 
Source :
@"Through the Looking Glass: Adventures in Pension Land"(PBGC)
A"The Role of the PBGC in Corporate Restructurings and Bankruptcies"(PBGC)
上記sourcesは、いずれもPBGCのBelt理事長による講演メモである。

まず、@の方では、年金改革法案の成立と、FASBによる年金会計の見直しが必要不可欠であることを主張している。特に、前者については、両院協議会(「Topics2006年3月13日 両院協議会成立」参照)の委員長となるEnzi上院議員が、『4月7日までに最終案を可決したい』と述べたことを紹介している。

一方、Aの方では、破綻後の再建下での年金プラン廃止は、万策尽きた後の最後の手段であるべきということを強調している。そして、最後に、次のようなフレーズで締めくくっている。
The company that makes promises to its employees should keep them and not shift its obligations to third-parties.
全くその通りである。そして、この方針を貫徹するためには、PBGCによる支払保証制度を廃止することが最善策なのである。