Topics 2003年8月11日〜20日     前へ     次へ


8月11日 Checkが届いた!
8月12日(1) もっと自由を!
8月12日(2) アメリカのキャッシュ・バランス・プランの課題
8月13日 独身者の逆襲
8月14日 一時金が年金を潰す


8月11日 Checkが届いた! Source : President Discusses Economy, Child Tax Credit in Philadelphia

今年の5月28日に成立したBush第2次減税法に伴い、扶養子女税額控除の増額分(子供1人当たり$400)のcheck発送業務が開始されていました。上記Sourceは、その発送業務開始に当たり、Bush大統領が行った演説です。

この演説が行われたのが、7月24日。
その後、7月29日付けで、各家庭に、Notice Letterが発送される。
そして、8月に入って、財務省のcheckが届きました。
受け取ったcheckの日付は、8月1日となっています。

その減税効果は如何に、との議論はあるものの、もらう方としては、とにかく嬉しい。アメリカ財務省発行のcheckなんて、あまり見るものではないでしょうから、ここにコピーを掲載しておきます。あくまでもご参考までに掲載するものですから、間違っても、変な取り扱いはしないでくださいね。我が家の家計に響きますから。

こうしてみると、「TAX RELIEF FOR AMERICA'S FAMILIES」という表現は、心に残りますよね。こういう工夫が、出生率の維持に一役買っているのでしょう。子供を産む産まないは、それぞれの夫婦の問題であるものの、国として子供を歓迎するという意思表示は大事だと思っています。

なお、我が家では、このcheckは、将来のアメリカでの支出に備えるために、アメリカの銀行に預金するつもりです。日本の景気回復には貢献できません。悪しからず。

8月12日(1) もっと自由を! Source : Survey Shows Schedule Flexibility Linked to Job Satisfaction (SmartPros)

従業員に満足感を持ってもらうためにはどうすればいいか。結論から言えば、柔軟な勤務時間が最も望まれているようだ。次は、従業員を対象に、「現在の仕事に最も満足感を与えてくれるのは?」と質問した結果である。

勤務時間の柔軟性 33%
意思決定権限 17%
仕事内容の多様性 17%
他の従業員との協調 17%
その他 14%

リストラ、合理化が追求されつづける中、残っている社員の責任はますます重くなっている。責任の重さが長時間労働に繋がるだけでは、いつか破綻する。その解決策としても、柔軟な勤務時間は重要であり、仕事と家庭のバランスを保てるよう配慮することは、有能な人材を確保するためにもなるということらしい。

さらに、柔軟な勤務時間の提供の方法として、例えば、次のような諸点を考慮することを提案している。

  1. 勤務時間の長さではなく、その成果で評価することに重点を置く。そのために、評価の尺度、手法を明確にしておく。

  2. 個人的な関心事項に注意を払う。それは、学位から家族との時間まで、様々であろう。そうした関心事項を知っていれば、どのような勤務時間の柔軟性が求められているかを理解できる。

  3. すべての従業員が9時〜5時に、効率が最も高いとは限らない。朝型、夜型などの特性に配慮する。

  4. 日々の細かな配慮も必要だ。例えば、早めのランチタイムを取ることで、私用を済ませることもできる。
自由気ままが大好きなアメリカ人。でも、合理化の嵐の中で、勤務時間のルーズさにけちをつけられたら、レイオフされてしまうかもしれない。そんなところで困っているアメリカ人の顔が目に浮かぶようだ。

8月12日(2) アメリカのキャッシュ・バランス・プランの課題 Source : Pension Issues: Cash Balance Plans (CRS)

アメリカが直面しているキャッシュ・バランス・プラン(CB)の諸課題を、丁寧にまとめているのが、上記Sourceである。関心のある方は、じっくりお読みください。

いつものように、ポイント概要は次の通り。

  1. アメリカ民間企業に勤める従業員のうち、半数近くが企業年金プランに加入している(2000年)。その分布は次の通り。
      
    全プランDBプランDCプラン
    従業員規模1-99人33%8%27%
    従業員規模100人以上65%33%46%
    フルタイム従業員55%22%42%
    パートタイム従業員18%6%12%
    全従業員48%19%36%

    プランのカバー率は、20年前とほぼ同じ水準だが、その構成比は、DBからDCへと大きくシフトしている。

  2. DCプランへのシフトの理由はいくつか挙げられる。
    第1は、DBプランの方が、複雑で管理コストがかかることである。管理コストとは、給付債務に見合う資産の積立や、支払保証制度への保険料などである。DCプランでは、これらのコストは必要としない。
    第2に、転職をする場合、DCプランでは完全なポータブルとなる。DBプランでは、勤続年数によって給付額が決まってくるので、転職すると不利になる。

  3. 近年、大企業が、伝統的なDBプランをCBに移行させている。CBとは、個人の仮想勘定に、「給与の一定割合+利子相当」を積み立てていく仕組みである。ただし、この「仮想勘定」という点が重要で、資産運用等はすべて、DB同様、企業側が行い、従業員が指図することはない。

  4. DBからCBへの移行が進んだ理由は、主に2つある。
    第1は、企業にとって、プラン費用を平準化できる点である。DBが、勤続期間のうち最後の数年の報酬額を基に年金給付額を決定するのに対し、CBでは、勤続期間全体を通じての報酬額をもとに決定される。したがって、DBでは、退職時が近づくにつれて年金債務が急速に膨らむのに対し、CBでは、勤続期間全体に配分される形になる。
    第2は、同じ理由から、若い人達にとって、CBの方が魅力的となる。DBでは、長期間勤務しなければ魅力がないが、CBなら、勤務した期間に対応する積立分が予見できるからだ。

  5. DBからCBへの移行にあたって、個人の仮想勘定を設ける必要がある。その仮想勘定の初期値をどうするか、でいろいろなパターンがあり得る。旧DBプランの場合と同額を初期値としてセットする場合もあれば、まったくゼロからのスタートという場合もある。また、その中間という場合もある。DBプラン以下とする理由としては、既にDBプランで積み立てた資産があり、その資産の裏付けのある額を初期値として提供するという考え方である。また、ゼロというのは、旧DBプランとは無関係にリフレッシュ・スタートでCBプランを開始するという意味を持つ。いずれにしても、もし従業員が退職し、一時金で受け取る場合には、旧DBと新CBのどちらか多い方を受け取ることができる。

  6. 旧DBプランよりも少ない額を初期値として与えられた場合、旧DBプランで受給権を獲得した額に新CBプランが追いつくまで、拠出をしないというルールがある。これをwear awayと呼んでいる。

    WEARAWAY

    上図で、移行時T1で、新CB<旧DBとなっている人については、新CB=旧DBとなるT2まで、仮想勘定への拠出をしなくてよい、ということになる。

  7. 一時金払いの計算方法は、CBであっても、DBと同様のルールを用いる必要がある。DBにおける一般ルール(ERISA + 税法)は、「通常の退職時における年金給付額の現在価値」により、一時金払いをすることになっている。つまり、企業側は、仮想勘定に積み立てた金額を当該プランが想定する予定利率で運用した場合の退職時年金給付額を一旦計算し、その年金給付額を30年もの国債の利子率で現在価値に割り戻す、という作業をしなければならない。そして、旧DBの一時金と新CBの一時金の多い方が支払額となる。

    もし、CBの予定利率>30年国債利子率であれば、要支払額>仮想勘定額となってしまう。二つの利子率が一致しない限り、必ず乖離が生じてしまう。連邦控訴裁判所の判決では、プランを合法化するためには、要支払額=仮想勘定額となることが必要とされている。

  8. IRSは、昨年12月、CBへの移行にあたり、年齢差別に該当しないためのルール案(「Topics 2002年12月11日 Cash Balance と年齢差別禁止法」参照)を公表したが、より複雑になるケースが考えられるとして、その提案を引っ込めてしまった。
いやはや、こんなにがちがちで、ルールのはっきりしないCBでは、企業側も安心して運用できまい。まして、CBへの移行が年齢差別にあたると判断されたIBMの判例(「Topics 8月2日 IBM敗訴」参照)が有効である限り、新たにCBへ移行しようとする企業は出てこないだろう。日本の厚生労働省の移行ルールは、明確かつリーズナブルであり、懸命な判断であったといえよう。

8月13日 独身者の逆襲 Source : A "Family Friendly" Backlash (Workforce Management)

ここ10年間、アメリカ企業は、『家族に優しい企業』として認知されるよう、努力を重ねてきた。しかし、そのような会社の経営方針は、子供を持っていない夫婦や独身者からは、反感を買っているそうだ。以下、上記Sourceの概要ポイント。

  1. 非営利団体「Unmarried America」の代表者、Tom Colemanは、「子供のいない従業員にだって、職場の外の生活もあれば、必要性や責任を感じて行っている活動もある。家族持ちの従業員ばかりを優遇するような企業の方針は、そういった従業員達の反感を買う」と述べている。

  2. AUのJoan Williams教授は、「家族に優しい方針は、男女に関わらず優秀な人材を確保するために必要である。問題は、そうした方針そのものではなく、福利厚生政策のマネジメントの問題である。全ての従業員が利用可能となる福利厚生制度を確立する必要がある。例えば、フレックスタイムを利用する際、その理由は問わないようにすべきだ」と述べる。

  3. HRコンサルタントのDavis Russoは、「福利厚生制度は有能な人材の確保のための手段であり、労働生産性を高めるための環境作りであることを、従業員によく理解してもらう必要がある。福利厚生制度は、すべての従業員が利用でき、企業のためにもなり、特定の誰かのための優遇制度ではないということを、企業は説明すべきだ」と述べている。

  4. Intel社のConnie Jacotは、「福利厚生制度の内容をあらゆるルートを通じて従業員に周知徹底することが重要だ。企業が用意している福利厚生の選択肢をできる限り説明し、あらゆるグループの従業員が同等に利益を得られるということを説明しなければならない」と述べている。

  5. そのような制度を確立するためには、従業員のニーズを把握し、最適な制度設計を行い、すべての従業員に適用するという、正規の手続きを踏むことが重要である。そして、最終的な選択は、従業員個人に委ねることである。

  6. 労働関係のコンサルタントであるMartha Muldoonは、「多くの企業は、『家族』という文字をなるべく使わないようにしている。家族という形態を超えた価値観を、我々は共有しているからだ。HR部門にとって重要なのは、福利厚生に関する限り、一つの制度で全ての従業員のニーズに対応することはできない、ということだ。すべての従業員が恩恵を受ける福利厚生制度を設立することも重要だ。福利厚生は企業文化の一部であり、従業員に耳を傾け、関心事項を理解することで、贔屓だと非難する声は小さくなる。職場や生活の場での従業員の多様性を理解する企業は、最終的には労働生産性の向上を勝ち取ることができる」と力説する。
これらの主張は、「Topics 8月12日(1) もっと自由を!」で紹介した実態とも相通ずるものがある。雇用は、「管理」ではなく「利用」を基本にしなければならない、というのが、アメリカ企業の人事の流れ、ということだろう。

国策、国の文化として、子供や家族を大切に、という考え方には納得できても、企業や団体という特定の目標を持った組織にとっては、そのような考え方が弊害となり得る。多様性への対応とは、個々人を尊重しつつ組織の目標を達成することの難しさへの対応である。日本社会にとっては、最大の難関となりそうだ。この難関を乗り越えない限り、国際競争力の維持は望むべくもないだろう。

8月14日 一時金が年金を潰す Source : A Lump-Sum Threat to Pension Funds (New York Times)

昨晩、アメリカPenn. Univ.の大学院生とディスカッションをした際、アメリカ人も日本人も、退職金は年金(annuity)よりも一時金(lump-sum)の方が好きだよね、と確認しあって、意気投合したところであった。

アメリカではますます人気が高まっている一時金払いだが、景気がよく、年金ファンドに余裕があれば何の問題もないのだが、企業の財務が苦しい、年金に積み立て不足がある、となると、そう簡単には見過ごせない。

典型的には、退職に近い年齢の従業員のケースがわかりやすい。会社の財務状況や企業年金の積み立て状況を見て、早期退職で一時金を取るか、通常の退職年齢まで数年頑張って年金を受け取るか、という究極の選択を迫られたとする。会社の将来が危ない、と思えば、アメリカ人達は、さっさと前者を選択する。すると、予定していなかった退職者の急増が生じ、一時金として年金ファンドから資金が流出してしまうのである。これが、年金積み立て不足に拍車をかける、という悪循環が発生することになる。

こういう事態は、既に起きている、と紹介しているのが、上記Sourceだ。2001年に倒産したPolaroid社では、従前は一時金払いを認めていなかったが、1998年に一時金受取を認めた。ところが、同社倒産後、半年間に675人の従業員が退職し、一時金で受け取ったために、年金ファンドから$81Mが流出してしまった。2002年7月にPBGCが同社の年金を引き取ったものの、その時点での積み立て資産は、給付債務$981Mのたった3分の2しか残っていなかったそうだ。

現在、Delta航空やAmerican Airwaysなど、経営危機に瀕している航空会社では、パイロット達が、日々、早期退職するかどうか、悩んでいるという。早期退職して一時金を受け取れば、年金ファンドの穴が広がる。これにどう対応するか、労働組合としては頭のいたいところである。

こうしてみると、ちょっと飛躍はあるものの、年金資産・負債の情報開示を解散基準で行うべき、という財務省提案は、説得性を増してくる(「Topics 7月14日(1) 企業年金のルール改正提案」参照)。今ここで全員が辞めて、一時金払いを請求した場合に、ちゃんと支払能力があるかどうかをチェックするというのは、現実的かつ重要な情報と考えられるからである。

また、DBにおける予定利率と一時金換算のための割引率の不一致も、解決すべき大きな課題となる(「Topics 8月12日(2) アメリカのキャッシュ・バランス・プランの課題」参照)。法定されている割引率のほうが低ければ、退職者にとっては一時金払いの方が有利、年金ファンドにとっては不利になるからだ。

翻って、日本起業の場合、一時金支払いが一般的であることは、こうした事態を充分想定した積み立てが行われるであろうことを期待させる。もちろん、日本の場合は、早期退職であれば、年金に限って言えば自己都合になるため、若干レートも低くなる。企業側としても、充分折り込み済み、と見てよいだろう。この辺からも、日本のDBの柔軟さが伺えるのである。

8月15〜18日で、こんな所に行ってきました。去年と較べると、とても短い夏休みでした。


TOPへ

≪このWindowを閉じる≫
USLABORMARKETに戻る