2月17日(2) Wal-Mart法案 続報

15日、Kentucky州下院委員会で、Wal-Mart法案が可決された(Knight Ridder)。ただし、下院本会議で本当に可決されるかどうかは、怪しい雲行きとのことである。

他方、同じ日、New Hampshire州下院で、Wal-Mart法案が否決された(New York Times)。雇用の確保ができなくなる、との懸念が主な理由のようだ。RILAによる訴訟、全米商工会議所の反対キャンペーン(「Topics2006年2月14日 Wal-Mart法案を巡る法廷闘争」参照)が、徐々に効果を現しつつあるようだ。

2月17日(1) FASBの決意 Source : FASB Responds to SEC Study on Off-Balance Sheet Arrangements (FASB News Release)

FASBが、昨年6月にSECが公表した提言レポート(「Topics2005年6月21日(1) SECの会計基準改善提案」参照)に対して、現在の対応状況ならびに考え方を公表した。本文はここ

SECのレポートでは、年金会計の見直しが指摘されており、FASBは、既にその対応を具体化している(「Topics2005年12月26日(1) 年金会計見直しの第一歩」参照)。今回のFASBレポートでは、その対応状況を概説しているだけであり、年金会計に関して特に大きな進展が示されているわけではない。

それよりも、このFASBレポートから強く感じ取れる、「FASBの意思」について、まとめておきたい。

  1. まず、SEC-FASB-PCAOBの協調体制により、一連の会計基準見直しを進めていく、との姿勢を随所に示している。もっと率直に言えば、「SECの強力な庇護のもとに、見直しを進めたい」という強烈なメッセージが読み取れる。

  2. 様々な抵抗があるものの、原則ベースの基準開発を進めていきたい、というメッセージが読み取れる。これは、当然のことながら、国際会計基準とのコンバージェンスを進めていくためにも、必要不可欠なファクターである。また、IASBメンバーからFASB議長に転出したハーツ議長の大きな役割でもあるのだろう。

  3. 基準の簡素化、財務諸表の透明性改善のために、公正価値(≒市場価値)による評価を全面的に採用するという考え方を支持している。
もともと、SECレポートに対してレスポンスを公表する義務は課されていないにも拘らず、FASBがレスポンス・レポートを公表したのは、こうしたFASBの決意を、SECにもサポートしてもらいたい、もしくは既にSECからのサポートを得ているとの印象を表に出すことに狙いがあったのではないだろうか。

2月15日 年金プラン凍結の定義 Source : Administering Pension Plans: Freeze ‘Em and Forget ‘Em is Not a Practical Strategy (CCA Strategies)

アメリカでは、ごく当たり前のことなのだが、ここではっきりとさせておく必要があるかな、と思って掲載してみた。当websiteでは、後述の後者の意味で使ってきたつもりだが、必ずしもその意味を明確にしていなかったような気もする。

上記sourceの通り、「年金プランの凍結」には、2つの意味がある。
  1. 新規採用者には加入を認めない。
  2. 既存の従業員も含め、すべての加入者に対して給付額の上積みを停止する。
例示として、「Topics2006年1月10日(2) IBM DBに訣別宣言」を参照いただきたい。IBMの訣別宣言の1〜4で述べているのは、後者の意味での凍結である。他方、10のCにある、「2004年12月31日以降に採用された従業員(現在でもDCのみ)」という表記は、2004年12月31日時点で、前者の意味での凍結、つまり新規加入者は認めない、という意味での凍結が行われた、ということになる。

事務手続きや考え方としては、後者の凍結の方が、かなり面倒だし、大きな決断となる。しかし、こうした明確な区別ができるのは、アメリカにERISAがあり、受給権という考え方が確立していることによるところが大きい。

日本の場合、労使合意による柔軟な制度変更が可能となるが、受給権という考え方が法律的に確立していないために、各個人の受給額が明確化しない、という難点もある。最近のNTTの事例のように、行政判断で給付減額ができなくなるというケースも出てきている。どういうスタイルが望ましいのか、まだまだ議論が必要なようである。

2月14日 Wal-Mart法案を巡る法廷闘争 Source : Discriminatory Health Care Mandates (RILA)

メリーランド州で成立した"Wal-Mart法"に対し、2月7日、小売業界団体のRetail Industry Leaders Association ("RILA")が、「ERISA違反である」との提訴を行ったそうだ。これは、ERISAで定めたものは州法等に優先するという、preemption規定に基づいた主張である。この点は、メリーランド商工会議所主張している。関連情報は、すべて上記sourceにリンクが張ってある。

他方、Wal-Mart法案提出の動きは、さらに広がっており、8日、コロラド州下院に、同様の法案が提出された(Kaisernetwork)。報道によれば、3500人以上の従業員を抱える企業は、賃金の11%を医療支出に使うか、州のMedicaid基金に拠出するよう求めるものである。

こうした、"Wal-Mart法案"の広がりに対して、全米商工会議所懸念を表明し、このような法案提出を阻止しよう、というキャンペーンを開始したようだ。

今後は、"Wal-Mart法(案)"がERISA違反かどうかをめぐる法定闘争、労使対決ということになりそうだ。