Source : | After Stinging Presidential Loss, Popular Vote Movement Gains Momentum In States (NPR) |
2016年の大統領選挙で、民主党クリントン候補は得票数では大きくトランプ大統領を300万票以上上回っていながら、選挙人数の確保ができず、トランプ大統領の勝利となった(「Topics2016年12月3日 2016年秋選挙の総括」参照)。これは、2000年の大統領選以来、記念では2回目の現象である。現行の大統領選挙は、選挙人(Electoral College)を選ぶことにより、過半数の選挙人を確保した候補者が当選となる。
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各州における選挙人の割り当ては、
〇州選出の連邦上院議員数(各州2名)
〇州選出の連邦下院議員数(10年毎の国勢調査に基づく。最低1名)
の合計である。
これに加えて、D.C.についても3名が割り当てられる。
つまり、
上院(100)+下院(435)+D.C.(3)=538
が総数となる。大統領選では、その過半数である270人の選挙人を確保した方が当選者となる。
ただし、各州の選挙人選挙で過半数を獲得した選挙人団がすべての選挙人を独占する(勝者総取り, winner-take-all)ため、総得票数(一般投票数)が必ずしも選挙人数に反映されることにはならない。なお、Maine州とNebrasuka州は、連邦下院議員数分の選挙人はそれぞれの選挙区での勝者に割り当て、上院議員数分は州全体での勝者に割り当てることとしているので、勝者総取りとはならない。
そこで、よりアメリカ国民の意向を反映できるようにすることを目的として、州政府同士が協定を結ぶ動きが進んでいる。この協定は、全国一般投票州際協定(National Popular Vote Interstate Compact, NPVIC)と呼ばれ、次のような内容となっている。現時点で、同協定に参加している州は、11州+D.C.で、それらの選挙人数は172人分で、発効までには98人分不足している。
- 参加資格があるのは、州政府+D.C.。
- 全米の一般投票最多得票者に、協定を結んだ州の選挙人枠を与える。
- 協定の発効は、協定参加州の選挙人数が270に到達した時点。
- 協定発効以前は、協定参加州においても現行通り。
- 協定発効後は、一般投票最多得票者が自動的に大統領選の当選者となる。
このような現状のもと、Colorado州とNew Mexico州で、協定参加への動きが加速している。CO州議会は2月21日に必要な法案を可決し、州知事もおそらく署名するとみられている。また、NM州では下院で2月初めに可決後、上院で審議中である。ちなみに、CO州の選挙人枠は9人、NM州は5人である。両州が協定に参加すれば、参加協定州の選挙人数は186人分、不足分は84人分となる。
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しかし、同協定に関しては、民主党が積極的であるのに対して、共和党は強く反対している。まさに、2000年、2016年の勝者と敗者の対立構図である。
共和党からしてみれば、一般投票得票数で勝負が決してしまうため、などの不満が強い。実際、2016年の選挙では、トランプ大統領は地方で圧勝している。このアドバンテージを失いたくないのは当然だ。
- これまでゲリマンダリングを駆使してまで積み重ねてきた選挙区での強みが消えてしまう
- 何よりも、共和党支持者の多い地方・田舎の選挙民の意向が無視されてしまう
共和党が地方からの積み上げを戦略的に進めてきたのに対して、民主党は連邦レベルで一気に勝負しようとしている。
The Washington Post
※ 参考テーマ「政治/外交」