1月20日は、Dr. Martin Luther King Day、祝日である。非暴力運動を提唱し、アメリカの公民権運動の立役者であったDr. Martin Luther King Jr.が暗殺されたのは、1968年のことである。公民権法(The Civil Rights Act of 1964)が成立してからわずか4年後のことであった。
我が家の子供達は、学校で習ったらしく、"I have a dream that one day the state of Alabama ... will be transformed into a situation where little black boys and black girls will be able to join hands with little white boys and white girls and walk together as sisters and brothers."("I Have a Dream" on the steps of the Lincoln Memorial on August 23, 1963)と、演説の真似事をしている。
私達の世代からすれば、ついこの間まで、アメリカでは、白人対黒人という対立の構図が明白に存在していたという印象を持っている。
しかし、この10年で、アメリカの人口構成は、大きく変化しつつあり、2001年には、ついにヒスパニック人口が黒人人口を上回ったようである。90年代のすさまじい移民の流入(合法、非合法を問わず)と、彼らの出生率の高さにより、予想を上回るペースで、ヒスパニックが増え続けている。
July 1, 2001 April 1, 2000 増加人数 伸び率 Total population 284.8 (100%) 281.4 (100%) 3.4 1.2 Hispanic or Latino (of any race) 37.0 (13.0%) 35.3 (12.5%) 1.7 4.7 White 230.3 (80.9% 228.1 (81.1%) 2.2 1.0 White alone, not Hispanic or Latino 196.2 (68.9%) 195.6 (69.5%) 0.6 0.3 Black or African-American 36.2 (12.7%) 35.7 (12.7%) 0.5 1.5 American Indian and Alaska Native 2.7 (0.9%) 2.7 (1.0%)) 0.1 2.3 Asian 11.0 (3.9%) 10.6 (3.8%) 0.4 3.7 Native Hawaiian and Other Pacific Islander 0.5 (0.2%) 0.5 (0.2%) — 3.0
こうした人口構成の急激な変化は、minority問題、予算配分等で政治的軋轢を呼ぶ可能性がある。移民の国ならではの問題であるが、そうした変化に積極的に対応しようとするアメリカ社会の柔軟性が羨ましい。
これは、Watson Wyattが、アメリカ・欧州企業の報酬制度と株主利益の相関関係を調査した結果である。ここでは、株主の長期的利益を高めていると思われる、6つの基本的戦略についてまとめている。
- 経営戦略と報酬制度を関連付ける
経営者が打ち出す経営戦略に対する理解を高め、生産性を高めるためには、従業員に正しい方向に進んでいるという確信を持たせることが重要であり、そのための重要なツールが報酬制度である。- 従業員に参加意識を持たせる
従業員に経営戦略を正しく理解してもらい、効率よく実践してもらうためには、従業員の参加意識が重要である。特に、高い生産性を持っている従業員の場合、金銭的な待遇よりも、知識・技能の向上のための教育や昇進の機会が与えられることが、重要なインセンティブとなる。- 従業員のインセンティブを高める
戦略的な報酬制度は、従業員のインセンティブを高める有効なツールとなり得る。また、転職率を抑制することもできる。- 多様性を持った報酬制度
従業員の生活環境、選好に応じた柔軟かつ多様性を持った報酬制度は、従業員の生産性を高めるために有効である。- 成功報酬
成果に応じた報酬制度は、有能な人材の生産性をさらに高める。特に、従業員個人がリスクを負う形で事業資金の調達を行えば、企業の利益に対する過大なリスクを避けることができる。- 意思疎通を良好にする
経営陣が経営戦略、人事戦略、人事評価を丁寧に説明することを、従業員は求めている。(筆者コメント:欧米企業では、経営陣によるトップダウンが多いといわれており、この従業員との意思疎通が充分ではないケースが多いのかもしれない。)
当然のことばかりのような気がするが、このような戦略を実践するためには、経営トップ、人事、財務が、常に同じ問題意識を持ちながら仕事を進める必要がある。それらの間の縦割りの壁が低くなればなるほど、こうした人事・報酬戦略が活きてくる。印象でしかないが、日本でも、いわゆる勝ち組と呼ばれる企業には、経営中枢と財務、人事の意思疎通がうまくいっている企業が多いと思う。日本企業でも、経営戦略と人事制度・報酬制度が直結するようになることを望む。
WorldCom $ 25M 325人 Conseco $ 33M 575人 Enron $140M 1700人
いずれも、Chapter 11による再建を目指している倒産企業が支払う「引き留め」ボーナスの金額である。倒産した企業によくこれだけの巨額のボーナスが支払えると思ってしまうが、再建中の企業、というよりも、無担保債権者達にとってみれば、有能な人材が流出せずに企業の再建に貢献してくれるかどうか、非常に関心の高いところなのだ。このような債権者達の意向を受けて、たいていの破産裁判官は、引き留めボーナス計画を承認する。
UALも、約300人を対象に、$ 20Mの引き留めボーナスを計画しており、破産裁判所に承認を求めている。これに対して、労組側は、会社を破産に追い込んだ同じ人間達に、どうしてこれだけの巨額のボーナスを支払わなければならないのか、と差し止め請求を出している。彼らにしてみれば、自分達の賃金はカットされるわ、年金もカットされるわ、持ち株は紙くずになるわ、で踏んだり蹴ったりで、不公平だという感覚になる。
実は上記Sourceも、結論部分で、「このような引き留めボーナスは合法であるが、それが必ずしも倫理的に正しいことにはならない」と、巨額の引き留めボーナスを批判している。
APにしては、余りにも感傷的な記事ではないかと思う。
例えば、こんな事例について、このAPの記者はどのように評価するのだろうか。この報道によれば、再建中のK-martのCEOに近く指名される予定のJulian Day氏には、基本的な年間報酬として$1M(株式公開会社の場合、報酬が$1Mを超えると超過分は損金算入できない。12USC§162(m))、Chapter 11から再興できれば、ボーナスとしてさらに$1M、2004年の収支目標が達成されれば、さらにボーナス$1Mが支払われる計画らしい。
こんな計画も、債権者会議が承認しなければ裁判所も認めない。それだけの巨額の報酬を支払っても、企業が再建して旧債権が回収できれば充分ペイするということなのだろう。まして、下手をすればChapter 11(清算)に移行しかねないような企業であれば、充分な報酬がなければだれもCEOを引き受けないだろう。また、優秀な人材が大部分流出してしまったような企業では、いくら報酬を積まれてもCEOを引き受ける人はいないだろう。
アメリカの経営者とはそういうものなのだと考えざるを得ない。報酬の多寡の議論は、感傷ではなく、収支で判断するしかないだろう。