第5章 社会保障の歴史

岡本 民夫 (同志社大学教授)

4 1960年代後半から1980年代中葉に至るまで

・・・・・・

@ 1960年代初期から1970年代前半まで

・・・・・・

さらにいまひとつ注目すべき課題は、ケベックで起きた「静かな革命」(Quiet Revolution) を契機に、再び州と連邦の関連についての議論が再燃したことである。これは社会保障や福祉サービスの責任の所在をめぐる問題でもあった。

まず、1961年には、王立保健サービス委員会が任命され、普遍的な医療保険制度の実施に関する勧告を行った。これに対して医師会によるストライキが強行されたが、一般的には各州とも成功裡に医療保険制度が導入されていった。まず1962年には、サスカチュワン州で、おそらく北米では最初の包括的な強制加入方式による医療保険制度が成立した。さらに、この委員会は1964年から1965年にかけて、再度の促進勧告を行い、結果的には、1968年、連邦政府が「医療サービス法」(Medical Service Act) を制定・施行して、医療保険の州レベルの実施に対して、費用分担を行うことになった。当初はいくつかの州で反対がみられたが、結局、3年間内に、10州すべてが医療保険法を通過させ、実施することになった。

・・・・・・