Topics 2002年7月11日〜20日 前へ
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18日 年齢差別禁止法と退職者医療保険
18日 年齢差別禁止法と退職者医療保険
2001年4月、年齢差別禁止法に関連する事件について、連邦地方裁判所から判決が示された。Erie County(Pennsylvania)が提供する退職者医療保険は、Medicare(公的高齢者医療保障制度)の対象となる65歳以降の給付に制約を設けた。このようなプランは、"Medicare carve-out" planと呼ばれ、広く採用されている。退職時から65歳になるまでは、企業が手厚い保険を提供し、65歳になってMedicare加入者になったところで、企業の保険は補完的な内容に縮小するというものだ。ところが、このMedicare carve-out planは年齢差別禁止法違反であるとの判決が出されたのだ。
退職者医療保険は、法的強制ではなく、企業の人事政策の一環として提供しているものであり、それが違法となりかねないとなると、企業はリーガル・リスクを負うことになる。それでなくても、近年の医療費の高騰に伴う保険料の引き上げにより、退職者医療を停止したいと考える企業が増えている。
EEOC(雇用機会均等委員会)は、一旦はMedicare carve-out planを是正する方向で、遵法マニュアルを公表していたが、このような企業の懸念を受けて、昨年8月に遵法マニュアルの関連部分を削除し、今年の5月には、年末までに年齢差別禁止法と、広く普及しているMedicare carve-out planの整合性を図るようなガイドラインを提示すると発表した。
退職者にとって、Medicareに加入できる65歳までの数年間、企業が退職者医療保険を提供してくれることは非常に重要である。そうでなければ、自腹で保険料を負担するか、無保険者になるかの選択をしなければならないからだ。Medicare carve-out planが違法であることが確定してしまえば、退職者医療保険そのものをやめる企業が続出するに違いない。EEOCにしてみれば、「角を矯めて牛を殺した」と言われかねないということだろう。
本件に関して、レポートをまとめて、「考察・コメント」のページに掲載しましたので、ご関心のある方は読んでみて下さい。
ところで、最近、この人
を見て来ました。相変わらず、飄々としていて、炎天下一人気を吐いていました。
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